2場所連続優勝に向けて単独首位を走ってきた新横綱稀勢の里がまさかの負傷に見舞われ、大詰めを迎えた春場所は一転して荒れ模様となった。

 日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、横綱日馬富士との結びの一番で寄り倒され、土俵下で左肩付近を押さえて苦痛に耐える稀勢の里の姿を役員室のテレビで見つめ、しばらく絶句。「どういう状況か。軽傷であってほしい」と言葉を絞り出した。

 土俵下の藤島審判長(元大関武双山)は左大胸筋負傷の可能性に言及し、「立ち合いで左(の攻め)がすっぽ抜けた時かもしれない。相当な痛がり方だった」と話す。新横綱が近くに落ちてきた片男波審判委員(元関脇玉春日)は「かなり痛そうだった。私にもたれかかってきて、なかなか立てなかった」と語った。

 左腕を三角巾でつった稀勢の里が救急車に乗り込む際、駆け付けた大勢のファンから「頑張って!」の声が飛ぶなど周囲は騒然。田子ノ浦部屋付きの西岩親方(元関脇若の里)は「本当に心配だ。大胸筋が切れていたとしたら長引くかもしれない」と視線を落とした。