西前頭4枚目の逸ノ城(25=湊)が、新入幕だった14年9月の秋場所以来4年半ぶりに9日目での勝ち越しを決めた。大関豪栄道(32=境川)を小手投げで破って8勝1敗とした。

実は1月の初場所後に始めたアーチェリーが好調の一因。新たな趣味となった競技で培った集中力で、8日目の大関栃ノ心戦の黒星を引きずらなかった。全勝の横綱白鵬を横綱鶴竜らと追っている。

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獲物を射るように、逸ノ城がキレ味鋭い小手投げで大関狩りを果たした。

もろ差しを許した直後、前に出てきた豪栄道の推進力を利用。1回転させた。「左上手を取れたので、どっしりと構えて思った通りに取れた。思い切りやれてよかった」と胸を張った。豪栄道に10勝8敗とした合口の良さもあるが「いつもの場所よりも集中できている」と、好調の要因を挙げた。

集中力を生んでいる一因に、初場所後の1月下旬から始めたアーチェリーがある。幼少期から弓矢に興味があり「やっている人を見るのも好き」と、日本や韓国の歴史ドラマで、弓矢を使うシーンを食い入るように見るという。都内の屋内施設を、まだ2度しか訪れたことはないが「3時間ぐらい、あっという間に過ぎる。新しい趣味」と、のめり込んでいる。

約18メートル先にある直径40センチの的を狙うだけに「集中力が必要。でも弓を引くのに力がいるから腕がパンパンで疲れちゃう」と、この日の左上手のように、まわしを引きつける力も自然と身に着く。ただし「まだ的の真ん中に当たったことないんです」と苦笑い。将来的なオリンピック(五輪)出場については「ムリムリ」と否定したが、40代のメダリストがいると知ると「そうなんですか!?」と色気も。関取衆最重量226キロの逸ノ城に、繊細な競技が相乗効果をもたらし始めている。【高田文太】