<映画大賞:作品賞、監督賞>

 西川美和監督(35)の長編3作目「ディア・ドクター」が、作品賞、監督賞に輝いた。女性監督として初受賞となった。同作は鶴瓶、余と合わせて4冠。「まさか4つもいただけるなんて」と笑みを見せた。小説やコミックなど、原作の映画化が多い現在、選考委員は、同監督がオリジナルを作り続けていることを高く評価した。

 1行に四苦八苦し、向いてないと思うこともあるそうだが、西川監督は「映画を作ることは物語を作ること。自分にしかできないことは、物語を作ること。そのことをやらなくなったら、私は映画を作らないと思う」ときっぱり言った。「ディア・-」を企画し、今年3月に亡くなった安田匡裕さんにも触れた。「1、2カ月かけて脚本を書くのですが、そういう時間を許してくれたのも安田さんでした。納得しなかったら、首を縦には振らなかったことを忘れないように、これからもやっていきます」。

 次回作にも近く取りかかるつもりだ。「苦手意識を持っている分野、選択肢を捨ててきたことをやってみたい」と、取り上げてこなかった、女性を描くことに興味を持っている。これまでは失敗してはいけないという気持ちがあったそうだが、ニセ医者を主人公にした「ディア・-」を書いて「肩書きは無関係に、ただの人として本質がつかめていればいいと思った。楽になりました」と、吹っ切れたような表情を見せた。【小林千穂】