西部劇の女性はおおむね弱者として登場する。例外作品にもファンタジックな味付けが施されてきた。「アニーよ銃をとれ」(50年)はミュージカル。「クイック&デッド」(95年)の女ガンマンは浮世離れしていた。

 地に足着けた今作のナタリー・ポートマンは例外中の例外といえるだろう。南北戦争に翻弄(ほんろう)され、ならず者集団に追い詰められて、やむにやまれず銃をとる。

 「レオン」のヒロインとして13歳で脚光を浴びて以来、18歳で「スター・ウォーズ」新3部作、30歳で「ブラック・スワン」と折々に強烈な印象を残した彼女が35歳で挑んだのは、砂ぼこりの中で戦う生身の女だ。

 前半、敵役集団の凶悪ぶりが随所に強調される。ヒロインの回想場面で、彼らに追われる理由がしだいに明らかになる。

 中盤、南北戦争の英雄だったかつての恋人が助っ人となり迎撃態勢が整う。武器の調達方法にもリアリティーがあり、ためから躍動に至る王道的運びには無理がない。その中で女性の真の強さが浮かび上がる。

 薄いメークの顔が脂ぎっても汚れても、ポートマンはやっぱり美しい。【相原斎】

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