花組トップ明日海りおは「人間味ものぞく情熱的な」光源氏を目指す。花組公演「新源氏物語」「Melodia-熱く美しき旋律」に主演し、芝居では光源氏を演じる。8月台湾公演「ベルサイユのばら」でフェルゼンを演じ、今回も時代、国は違えども同じ貴族。「優雅さを生かせたら」と話し、浮世離れせず、熱い源氏の君像を求める。兵庫・宝塚大劇場は明日2日~11月9日、東京宝塚劇場は11月27日~12月27日。

 ベルサイユから平安宮廷へ-。花組の貴公子トップが、希代のプレーボーイ「光源氏」に臨む。

 「普段はお着物を着る機会が少ないので、体になじむように、お稽古から」

 和装で取材場に現れた。久々の時代物。もっとも、月組時代に「夢の浮橋」新人公演で、源氏の血筋を引く匂宮(におうのみや)を演じており、平安作品の経験はある。

 「純粋な和物は、紫子(ゆかりこ=10年月組)以来。いろんな方が書かれている光源氏を読んで、考えて、平安貴族のイメージを」

 衣装も重く、大きく、早変わりも至難だ。

 「台本は(義母の)藤壺の宮への思いが強い。浮世離れした人ではなく、共感を呼べる情熱的な人物を演じたい」。出会う女性を愛する気持ちも、藤壺へ思いを寄せる葛藤も真実だ。

 「源氏の君もきっと自問自答しながら生きていた。何か足りないものを埋めようともがいていた。そこに共感できる面もあります」

 宝塚では、トップはトップ娘役と組むことが多いが、今回は光源氏だけに、次々と“相手役”を替える。

 「とてもおもしろい。違う娘役や男役が演じる“女性”とからむことで生まれる感情、雰囲気から、新しい発見があります。私は、せわしなく動かない、いかに優雅に見せるか。視線の使い方から考えています」

 雅(みやび)な空気感。前作「ベルサイユのばら」のフェルゼン役が生きる面もある。

 「身のこなし、貴族としての生活の中での感覚、優雅さが生きたらいいですね。普段から着物を着ているだけで背筋もピンとしますし、腰が落ちる。何か物をとろうとする動きも気を使いますから。ただ、肩はこりますし、足袋なので、足も疲れます(笑い)」

 疲れを癒やすのも“日本風”になっているそうだ。

 「家に帰ったら、白檀(びゃくだん)のお香をたきます。すごく癒やされるし、和の空間を感じられるのがいい。毎朝、スプーン1杯のはちみつ。抗菌作用が高いものを選んで。免疫力が高まるのか、風邪をあまりひかなくなりました」

 トップ就任から約1年半。たたずまいも悠然としてきた。8月の台湾公演は台風の直撃を受け、初日が遅れる事態になった。公演に備えた稽古もままならない状況に追い込まれた。

 「稽古ができないかもしれない状況で、下級生にいたるまで、モチベーションを維持して、みんな良い方向に転換できていた。(昨年の)100周年運動会を思い出しました」

 窮地での結束力、逆境で力を出す姿に「花組の強さ」を実感した。「私自身も、追い詰められると力が…燃えるタイプ」。闘志を前面に押し出しはしないが、内に秘めた強さはある。

 下級生時代、トップといえば、稽古場に入っただけで空気を変えるオーラを持っている。そんなイメージだったというが…。

 「私自身が、やるべきことに集中し、体にたたき込んでいれば、みんなが温かく支えてくれる。普段は肩の力を抜いていていい。私は私らしく。今はそれでいいと思っています」。自分らしい形で引っ張っていく。【村上久美子】

 ☆明日海(あすみ)りお 6月26日、静岡市生まれ。03年4月「花の宝塚風土記」で初舞台。月組配属。08年「ミー・アンド・マイ・ガール」で新人公演初主演。同年末「夢の浮橋」新人公演で匂宮を演じて主演。10年2月の中日劇場「紫子」でも和物。12年4月に月組準トップ。13年3月、花組へ移り、昨年5月に同組トップ。本拠地お披露目は「エリザベート」。今年8月「ベルサイユのばら」台湾公演に主演。身長169センチ。愛称「みりお」。