NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(月曜午後10時25分)で紹介された競走馬オグリキャップの性格です。同番組が初めて人間以外を主人公にした特別版。この馬にかかわったさまざまな人がオグリの「仕事の流儀」を証言しました。私も「手がかからないオグリ」を見たことがあるので、内容をわくわくと見ました。

 89年11月、ジャパンカップを控えて東京競馬場で調教中のオグリキャップを取材しました。といっても、この時の取材目的は、当時絶大な人気と実力を誇ったスーパークリーク。ジョッキー界のサラブレッド、武豊騎手とのコンビで空前の競馬ブームを巻き起こしており、私のようなルーキーの芸能担当記者もなぜか単独取材に恵まれました。貴公子のようにかっこいい馬で、厩務員さんが「ちゃんとブラッシングしてやらないと機嫌よくトレーニングしてくれない」という馬体はピカピカ。ニンジンを食べさせるOKをいただいたのですが、縦に4等分しないと食べない王子っぷりに感動したの覚えています。

 取材後、競馬場の関係者から「向かいの馬房にオグリキャップがいるよ」。行ってみると、オグリが1人でエサの桶に顔を突っ込んでいました。常に多くの人に世話してもらっているスーパークリークとは対照的で、ぽつんとおとなしく、体がピカピカでなくても平気な様子。スーパークリークに近づく時は怒らせないよう配慮を求められましたが、オグリに関しては「近づいても気にしないし、手のかからない子」という説明でした。初対面の私が近づいたくらいでいちいち驚かない淡々としたたたずまい。畑違いの現場に来たルーキー記者としては、おおらかさに救われる思いでした。

 番組では、二流の血統、地方競馬出身という「格差」をはねのけてエリート馬と渡り合い、勝利するオグリキャップの強さに焦点を当てていました。「職業・競走馬」とテロップされたのもなごみます。

 苦労人の馬主に拾ってもらった原点や、笠松競馬時代の快進撃、中央進出1戦目の圧勝デビュー、タマモクロスとのG1名勝負など、何もかもがドラマチックなんですよね。複合的な原因で惨敗を重ねて見ていられない晩年と、ファンの祈りが通じたような90年有馬記念ラストランのスター性。私自身、「勝たなくてもいいから」と感謝の単勝馬券を買ってレースを見ていた1人でした。どよめきの中を1着で駆け抜ける雄姿と、17万人のオグリコールは、いつ見ても胸がいっぱいになります。

 最強馬はほかにもたくさんいますが、オグリほど見る人が自分の人生を重ね、競馬のファン層を一気に変えたスーパースターはいないのでは。今でもあの有馬記念はあらゆるスポーツ名場面ランキングの常連ですし、「プロフェッショナル」が主人公として取り上げたくなる永遠のスターなのだと思います。関係者が語る、オグリの仕事の流儀が「まるで口笛ふいて走っている感じ」(武豊)「心がブレない。淡々と仕事をしている」(岡部幸雄)「全然動じない」(安藤勝己)というのもすてきでした。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)