話題の中学生プロ棋士、藤井聡太4段(14)が、将棋界のスーパースター羽生善治3冠(46)を111手で下しました。非公式戦とはいえ、90年代の羽生フィーバーを知る世代としては衝撃の出来事。漫画、アニメ、映画と大ヒット中の「3月のライオン」を思わせる若い才能にわくわくしました。

 インターネットテレビ局Abema(アベマ)TVの番組企画「藤井聡太四段 炎の七番勝負」の第7局。先手の藤井4段が中盤以降リードを奪い、勝ち切りました。「特別な存在」とあこがれる羽生3冠を相手に「僕の立場で羽生先生と対局できるのはめったにないこと。実力は出し切れました」という若いハートにしびれます。中学生の正装、学ランで指している姿もフレッシュですし、愛嬌(あいきょう)のあるルックスや穏やかな語り口も、いいキャラクターです。

 羽生3冠は「すごい人が現れた」と、攻めの棋風をたたえました。何が起こっているのかをかみしめながら「負けました」と投了する光景は、いかにも新時代到来を思わせます。25歳だった羽生さんが、将棋界の至宝、谷川浩司さんを下して7大タイトルを独占した時の光景をだぶらせた人も多いのではないでしょうか。あの時の羽生さんも、寝癖がトレードマークの若き天才ぶりが話題だったなあと懐かしくなりました。羽生さんがこのままでいるはずもないので、今後の対戦が楽しみです。

 藤井4段は昨年10月に史上最年少の14歳2カ月で4段に昇格しプロになった注目棋士。若き天才棋士の活躍を描く「3月のライオン」と重なります。主人公の桐山零は17歳ですが、史上5人目の中学生プロ棋士として将棋界に飛び込んだという共通点もあって、漫画にリアルが追いついている感じです。桐山に立ちはだかる宗谷名人は、羽生さんと谷川さんがモデルといわれます。「3月のライオン」公開中に起きたリアルなドラマにわくわく。どちらも、今後が楽しみです。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)