12年7月16日の69歳誕生日に師匠の名跡を継いだ落語家、6代桂文枝(71)が7日、大阪市内で、襲名丸3年となる今年7月16日に、大阪・なんばグランド花月で、「旭日小綬章受章記念 文枝SHOW 2015」を開き、18年ぶりに古典落語を披露することを発表した。

 演目は、今年3月に亡くなった桂米朝さん(享年89)の口伝で残る「抜け雀」で、ネタ下ろし。創作落語250本を生み出し、生涯「300本」を目標に掲げる創作の第一人者、文枝が原点回帰の古典に臨む。

 「米朝師からは、前々から『4代目文枝のネタもやったらええ』と言われてまして。新しいネタを作り出すんも大事やけど、古典を今の(時代の)形にして残していくんも大事やと思いました」

 文枝は、米朝さんの弟子で「爆笑王」と呼ばれた5年先輩の故桂枝雀さんへの対抗心と畏怖から、古典ではなく創作に専心。過去に例を見ない数のネタを創作し、第一人者としての立場を築き上げてきた。

 一方で、かつて枝雀さんから「いつか古典もやったら」と言われていたことから、旭日小綬章を機に、古典への取り組み再開を“公約”。今回の公演で、それを果たそうと、18年ぶりの古典挑戦を考えた。

 ネタ選びに悩むうち、枝雀さんの師匠で、米朝さんから「4代目のネタを」と勧められていたことを思い返し、4代目までの文枝が得意とし、米朝さんが掘り起こして残した「抜け雀」に決めた。

 同演目は、絵に描いた雀が抜け出して起こる人間模様、騒動を描き、文枝は「夢のようなある種、幻想的な落語」。一種のファンタジー的要素に魅力を感じ、さらに、作品に登場する絵師にも絵画好きゆえ親近感も抱き、18年ぶり古典のネタを決めたようだ。

 文枝は毎年誕生日の襲名記念日に独演会イベントを開き、昨年は大地真央、一昨年は浅丘ルリ子ら意外なゲストを呼び、歌やフリートークなどでわかせてきた。しかし、今年は受章や米朝さんの死去などもあり、原点回帰への思いを強めた。ゲストには春風亭小朝を招き「純然たる落語会、ふたり会のようにしたい」と言い、両者が創作、古典を1席ずる演じる。