今年3月に89歳で亡くなった人間国宝の落語家、故桂米朝さんの長男・桂米団治(56)が25日、大阪市内で追悼CDと毎夏開催の米朝一門会を追善興行とすることを発表した。

 さらに、兵庫県尼崎市の米朝さん宅を、資料館として一般公開するアイデアもあることを明らかにした。

 上方落語の宝が亡くなって2カ月。父を送った米団治は現在、上方落語の資料の宝庫とされる自宅の整理に追われている。

 「もう、それは膨大な資料で、手紙も出てくる。これは(整理に)1年かかりますわ。今年は(仕事は)ゆっくりして、こっちをやります」

 戦後の上方落語を復興させ、上方最大の一門を束ねた父の偉業の足跡を、あらためて感じる日々という。

 「まずは、この家をどうすんのか、と。財産を私が相続するのか、事務所が相続するのか、NPO法人に相続してもらい、資料館にするのか、まだ何も決めていない。けども、それ(自宅の一般公開案)もありますんで、近く一門で話し合って決めたい」

 父であり師匠でもあった米朝さんは、米団治にとって、ただの父親ではなかった。「生きてる時は一門での僕の立ち位置とか、でも、やっぱり父と子で…。そういったことから今は解き放たれています」。涼やかな笑顔をさらに涼しくして、こう話した。

 息子として、ファンに愛され、支えられた父の姿を伝えたい思いと、一門の、上方の宝としての重さをはかりあぐねている。

 古い話の書き起こし、聞き起こすなど、米朝さんの自宅には、米朝さんが心血を注いだ上方落語の歩みが詰まっており、資料館としても類を見ない貴重な物が多い。今後は一門、事務所も含めて、相当な時間をかけての協議が必要になりそうだ。

 偉大な父の足跡を伝えることは米団治の義務でもあり、まずは追悼CDを発表する。50~60歳代の米朝さんが「米朝十八番(独演会)」で演じた高座を収めて77年、85年に発売したLP盤2枚をCD化し、6月10日に発売。2枚とも8枚組で8888円。「地獄八景亡者戯」「らくだ」「百年目」「口入屋」など、上方落語家の“教科書”ともされる口演を収録している。

 また、米朝さんは毎年、盆と正月の時期に「大阪に人がおらんようになる」と言い、あえてその時期に一門会、独演会を開いており、現在も一門で毎年夏、正月の開催を恒例化している。

 今年も8月16~17日に大阪・サンケイホールブリーゼで一門会を行うが「桂米朝追善 米朝一門会」とし、3公演を予定する。桂ざこば、米団治が前座を務め、原則として直系弟子がネタを演じる。

 最終回3回目のトリは、最古参弟子の月亭可朝が一門会に初出演し「算段の平兵衛」を高座にかける。