大腸がんのため闘病中だった俳優今井雅之さんが28日午前3時5分に大腸がんのため、都内の病院で亡くなったことが分かった。所属事務所がマスコミ各社にファクスで発表した。54歳だった。通夜、葬儀は近親者で密葬の形で行い、後日、お別れの会を行うという。

 今井さんは4月に都内で会見を行い、ステージ4の末期がんと告白。転移の可能性も明かしていた。5日には降板した主演舞台「THE WINDS OF GOD」の開演前、「がんと闘う」とあいさつし、舞台復帰を目指していたが、願いはかなわなかった。

 今井さんは降板した舞台の千秋楽(5日)の開演前、「本当はこの舞台に役者として立ちたかった」と悔しさをにじませ「役者人生を充実できるようにがんと闘う」と語っていた。生きること、再び舞台に立つことを強く望んでいた今井さん。願いはかなわず天国に旅立った。

 関係者によると、今井さんはリハビリに取り組んでいたが、容体が急変し、予断を許さない状態となり、28日午前3時5分、都内の病院で静かに息を引き取ったという。所属事務所は治療に携わった病院関係者やファンに感謝を記すとともに、今井さんの遺志に従い、通夜、葬儀について近親者だけの密葬の形をとると説明した。また、後日、お別れの会を行うとした。

 今井さんは降板した1日の舞台初日から千秋楽の5日までは、比較的体調が落ち着いており、1日も休むことなく、劇場に顔を出し、開演前、観客に降板のおわびと感謝の言葉を述べていたと説明した。その後、大阪や京都など関西地区の公演には姿を見せず治療に専念していたという。

 今井さんは、抗がん剤治療で、ステージ4の大腸がんと闘ってきた。生前、副作用について「船酔いしているところで、熱が42度くらいある感じ。苦しいし、眠れない」と語っていた。ようやく、がんとの苦しい闘いから解放された。

 4月に都内で降板会見を行った今井さんは、やせ細った体とかすれた声で病状を説明していた。昨年夏に都内の病院で風邪と診断されたが、同11月中旬、仕事で出向いた大阪で体調不良を感じ、兵庫・西宮市の病院で、ステージ4の大腸がんと診断。大小複数の腫瘍が見つかった。「悔しかった」と声を震わせ、風邪と診断した病院に「ふざけるな」と唇をかんで怒りものぞかせた。

 その後、同11月下旬に横浜市内の病院で手術。病院を移り、抗がん剤治療を行っていると説明。転移について「可能性大です。影が見えています」と死への恐怖を押し隠すようにきっぱりと語っていた。

 同会見では、降板した舞台に「後半から出たい」と復帰意欲を見せていた。仕事ができず、生きるだけなら殺してくれと、安楽死を医師に求めたこともあったと声を詰まらせていた。秋には主演映画「手をつないでかえろうよ」の撮影があり、涙を浮かべて「秋までは寿命を持たせて」と祈るように語っていた。最後の最後まで再び仕事をする希望を捨てず、がんと闘い続けた。