ドラマ「相棒」などに出演した俳優成宮寛貴(34)が9日、芸能界引退を発表した。所属事務所を通じて報道各社に自筆のファクスを送った。今月2日発売の写真週刊誌フライデーにコカインなど薬物使用疑惑を報じられたが、「複数の人達が仕掛けた罠(わな)に落ちてしまいました」と疑惑を否定。私生活について度々報じられたことなどに耐えかねて引退を決意したという。所属事務所は思いとどまるように説得したが、意志は固かった。

 突然の発表だった。9日午後4時すぎ、成宮は報道各社に送ったファクスで引退の決意を伝えた。「今後芸能界の表舞台に立つ仕事を続けていき関係者や身内にこれ以上の迷惑を掛ける訳にはいかない。少しでも早く芸能界から去るしか方法はありません」。引退は前日8日に申し出た。所属事務所はこの日、「突然の申し出に大変驚き、何度も話し合いの機会を持ちましたが、決意が非常に固かったため、受け入れざるを得ないと判断いたしました」と説明。9日付で契約を解除した。

 成宮は薬物使用疑惑の渦中にいた。今月2日にフライデーが「コカイン吸引疑惑」を報じた。同誌は成宮の友人を名乗る人物からの提供という「現場写真」も掲載。成宮は同誌発売前日に「事実無根の記事に対して、非常に憤りを感じます。私、成宮寛貴は、薬物を使用したことは一切ございません」とコメントを発表した。しかし9日発売の同誌は再び疑惑を報道。友人とみられる男性を介してコカインを調達しようとする電話音声の内容を伝えた。

 成宮はこの日、一連の疑惑について「心から信頼していた友人に裏切られ複数の人達が仕掛けた罠に落ちてしまいました」と身の潔白を主張した。記事には友人男性に好意を寄せていることを思わせる記述もあった。「この仕事をする上で人には絶対知られたくないセクシャリティな部分もクローズアップされてしまい」とした上で「今後これ以上自分のプライバシーが人の悪意により世間に暴露され続けると思うと、自分にはもう耐えられそうにありません」と引退決意に至る経緯をつづった。

 関係者によると、成宮は2日の報道後、所属事務所側から検査を促されたが、病院で検査を受けることを拒否し、自分で調達した簡易キットで検査をした。結果は陰性だった。所属事務所はこの日「本人からの事情聴取、薬物鑑定など必要な調査を行ってきましたが、本人の薬物使用を裏付ける客観的事実は確認できませんでした」とあらためて疑惑を否定。成宮と弁護士と法的措置について検討していたところ、突然、引退の申し出があったという。

 文書は、ファンに向けた謝罪と感謝で締めくくられた。「こんな形で去っていく自分を許してください。本当にごめんなさい。そして、ありがとうございました」。「相棒」「ごくせん」など数々の人気作品に出演した俳優の最後の言葉にしては、あまりにも切ない言葉だった。

 ◆成宮寛貴(なりみや・ひろき)本名・平宮博重。1982年(昭57)9月14日、東京都生まれ。オーディションを経て00年の宮本亜門氏演出の舞台「滅びかけた人類、その愛の本質とは…」でデビュー。01年「溺(おぼ)れる魚」で映画デビュー。「木更津キャッツアイ」「ごくせん」「陽はまた昇る」などのドラマに出演。「相棒」シリーズは3代目相棒として12年のシーズン11から3シーズンに出演、14年の劇場版にも出演した。05年にエランドール賞新人賞受賞。172センチ。血液型A。