公開中の映画「傷だらけの悪魔」(山岸聖太監督)で、いじめを先導するリーダーとして強烈な演技を見せる女優の加弥乃(22)が、日刊スポーツの単独インタビューに応じた。「傷だらけの悪魔」と「新宿スワン2」(園子温監督)が現在公開中で、2月25日には「きょうのキラ君」(川村泰祐監督)の公開も控えるなど、昨年から注目の監督、話題作への出演が相次ぐ。その急成長の裏には、秘められた修業の日々があった。【村上幸将】

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 加弥乃は、かつてアイドルグループの一員として活動し、女優を目指して07年に卒業した。11年7月に1度、芸能活動を休止し13年に復帰して以降、女優として活動してきた。

 加弥乃 ミュージカルから始まって、ドラマ、CM、映画…いろいろな人になれるし、楽器など普段の自分がやらないことを、短期間で覚えるのが純粋に楽しい、楽しいでやってきたんですが、20歳を過ぎて、楽しいだけじゃないんだと気付かされました。先輩やスタッフの方に教えていただくこともありました。ジェットコースターに乗るような楽しさではないけれど…楽しいですね。世間で、まだまだ加弥乃を知らない人は多いし、アイドルだったことを知らない方も増えていくと思う。いつか「アイドルだったんだね」と言ってもらえるようになりたい。(女優だという)誇りはあります。

 ◆表舞台から1年姿を消した理由

 それが15年12月公開の映画「W~二つの顔を持つ女たち~」の撮影を終えた14年12月から約1年、再び表舞台から姿を消した。その裏で、ひたすら演技のワークショップやレッスンに明け暮れた。20歳を迎え、大人の女優を目指すという方向性を固めた所属事務所が、加弥乃に課した1つの試練だった。

 関係者 「W~二つの顔を持つ女たち~」での演技を見て、芝居のてこ入れをしないといけないと思った。ほとんど仕事を入れないで、芝居の勉強ばかりさせました。見せられるまでに芝居が固まるまで、1年ちょっとくらい、いろいろな監督のワークショップやレッスンを受けさせました。

 加弥乃 「仕事、したいんですけど…」って、ずっと言ってたんですけどね。アイドル時代は、中心メンバーでもないのに仕事があって、とても忙しかった。昔から仕事が大好きで、1番楽しく、他のことの原動力にもなっていたので辛かった。純粋に役や、お芝居を考えたり、ワークショップも1つ1つ、本気で向き合うんですけど…カメラがないことに対する物足りなさがありました。だったら、早く仕事をもらえるように頑張ろうと思いました。

 1年の修業をへた15年、加弥乃はNHK連続ドラマ「ぼんくら2」のオーディションを受け、おさん役をつかみレギュラー出演を果たした。その後は「作品の内容とか関係なく、どうしても、やらせたい監督だけ」(関係者)と狙いを定めたオーディションを受けた。いずれも人気、実力を兼ね備えた監督、演出家が手がける話題作だったが次々と出演を決めていった。

<16年>

 映画「何者」(三浦大輔監督、10月15日公開)

<17年>

 フジテレビ系ドラマ「嘘の戦争」第1話(三宅喜重監督1月10日放送)

 映画「新宿スワン2」(園子温監督、1月21日公開)

 映画「きょうのキラ君」(川村泰祐監督、2月25日公開)

 WOWOW連続ドラマW「北斗」(滝本智行監督、3月25日スタート)

 アイドル時代に映画に初出演した11年の「アバター」から、修業に入る前に出演した15年の「W~二つの顔を持つ女たち~」まで、5年間で出演した映画は8本。それが16年10月公開の「何者」を皮切りに、17年2月公開の「きょうのキラ君」までの4カ月間に、出演した4本の映画が劇場公開、または公開待機作に名を連ねた。

 加弥乃は今後について「お芝居について(撮影前に突き詰めて)事前に話し、時間をかけられるのは映画なのかなと思うところはありますが、映画だからドラマだからは関係なく、与えられた役や作品のテイストを考え、全力でやりたいです」と意気込みを語った。

 共演したい女優を聞くと、日本屈指の演技派女優・樹木希林(74)の名を上げたが、その理由は、実にかわいらしいものだった。

 加弥乃 樹木希林さんが小学生の頃から大好きです。好きになったきっかけは、顔がおばあちゃんとそっくりで、親近感が湧いてお芝居を見るようになりました。共演させていただけるよう頑張ります。

 修業に入る前、加弥乃は周囲の関係者に「この世界で食べていく。自分が家族を支えたいし一生やりたい」と固い決意を口にしたという。その決意をもってしても辛かった、カメラの前に立てなかった1年を乗り越えた今の思いを聞いた。

 「今は、1つ1つの作品が表に出ることが、本当に楽しみでしょうがないですし、うれしいです!!」

 加弥乃の声は、ひときわ弾んでいた。

 ◆加弥乃(かやの)1994年(平6)2月10日、東京都生まれ。子役として「アニー」などの舞台に出演。キューピーのCM「たらこ・たらこ」の歌とナレーションを担当。07年のテレビ東京系ドラマ「チョコミミ」で連続ドラマデビュー。特技はバック転などのアクションと殺陣、アルトサックス、ダンス。161センチ、血液型A。