昨年7月16日の誕生日から襲名興行を全国で行ってきた上方落語家、6代桂文枝(70)が28日、大阪市内で、来年3月8日の大阪・フェスティバルホール公演を千秋楽とすると、発表した。昨夏から続けてきた襲名全国ツアーは、112回目となる同公演でファイナル。通算12万人以上を動員する見込み。

 「去年の夏に始めた時は、非常に疲れていまして、最後までいけるのかな?

 と思っていました」。少しふっくらした表情の文枝は、すでに99公演を終えたツアーを振り返った。

 というのも、年中無休で働いてきた肉体的な疲労に加え、精神的な疲れも大きく影響していた。興行準備を始めていた一昨年11月には、兄とも慕った立川談志さんが亡くなった。談志さんには襲名を相談し、自ら育て上げた前名の「三枝」を大事にすべきと諭され、襲名を反対されていた。

 それでも、文枝は先代の師匠への思いから襲名を断行。興行の成功を、談志さんに報告したい思いもあっただけに、ショックは大きかった。

 襲名興行が始まった昨年10月には、心の師とも仰いでいた作家藤本義一さんを失い、心身は疲弊しきったままの興行ツアーだった、

 しかし、興行ツアーの最中、テレビ番組の収録で、生後11カ月で離れていた父の消息を訪ね、父の遺骨とも“面会”した。「なぜか元気になってね、今はまだまだいけるいう気がしています。父が後押ししてくれんやないですかね」と、笑顔を見せた。

 実際、血色も良く、精力的な近況がうかがえるにこやかな表情。来年3月の千秋楽では、2席を演じる予定で、うち1席は「チャレンジする精神を忘れずにいたい」と、新作をネタ下ろしする。

 場所も、思い出深いフェスティバルホール。今春、新装されたが、旧ホール時代から愛着のあるホールだ。関大時代にも出演し、若き三枝が名をあげた「ヤングおー!おー!」や、長寿レギュラー「新婚さんいらっしゃい!」も、同ホール内で収録してきた。「ここでやれるということに、とても感謝しています」と話した。

 千秋楽の口上には、桂歌丸、三遊亭円楽、林家正蔵、笑福亭松之助、桂ざこばら、東西の大御所から実力者まで20人以上が並ぶ予定。口上でこれだけの数がそろうのは、例を見ないケースで、文枝は「ギネス級ですかね。(ギネス)申請してみたい」と、記録申請にも意欲を燃やしていた。