日本有数の繁華街、東京・渋谷の地下を流れる川を題材にした映像と小説のコラボレーション企画が話題になっている。DVD「virtual

 trip

 TOKYO

 渋谷

 underground

 to

 ground」と豊田和真氏(20)の小説「SILS・MARIA」だ。

 その名の通り、地形が谷になっている渋谷は、新宿御苑を源流とする渋谷川や上流が童謡「春の小川」にも歌われた宇田川など、いくつかの川の合流地でもあった。しかし、64年の東京五輪開催にともなう都市開発で、川にふたをして道路が建設された。川は人々の前から消えて40年以上になるが、今も地下を流れ、下水道などに利用されている。渋谷駅より下流は“地上”に現れ、東京湾に流れ込む。渋谷駅ビルの百貨店に地下売り場がないのは、渋谷川の上に建設されているからだった。

 偶然目にした古地図で川の存在に気付いた豊田氏が、渋谷川を利用して暴力団を次々襲う謎の男の物語を執筆。その取材過程で、映像プロデューサーの父健雄氏とともに東京都下水道局の協力を得て、渋谷川の様子を撮影しDVD化した。

 一部、コンクリートや鉄筋がむきだしになり、廃虚のような雰囲気だが下水道にしては広い空間が川の存在を示している。水の流れる音や音楽で幻想的に仕上がったが、猛烈な悪臭の中、決死の撮影だったという。