<舞台「ムサシ」W主演対談(下)>

 藤原竜也(26)と小栗旬(26)が主演舞台「ムサシ」を、新たな代表作にしようとけいこに励んでいる。対談最終回のテーマは、舞台で常に新境地を披露してきた2人が何に興味を持ち、演技に還元しているのか?

 最近気になる話題や近況を語り合った。【構成・瀬津真也】

 仕事とプライベートを分けて考える若者が多い。しかし、若手トップのこの2人は生活と仕事が密着している。

 藤原

 人と違うところで、どれだけ自分のアンテナを張っていられるか?

 人が普通に感じるものを、どう感じるか?

 例えば、ガールフレンド、遊び、自然、花1輪に対しても、何を感じられるか?

 オレは、(自発的に)いろんなことに関心を持ってますね。

 藤原には、最近気になるニュースがあった。

 藤原

 名古屋の闇サイトOL殺人事件の裁判です。加害者たちが、法廷では知らん顔して、犯行のなすりあいまでしているわけでしょ。あんなヤツらに娘を殺されたことが、まず母親にはショックだろうし。さらに日本の司法だと、被害者の人数に対して刑が決まる。テレビでも論じられていたけど…。

 自然な感情と建前の衝突に、憤りややるせなさを感じている。一方、現在の小栗は別のインプットをしている。

 小栗

 オレは…、気になることって、今は特にないですね。実際、井上(ひさし)さんの脚本がいつ上がるかだけで。

 藤原

 確かに(笑い)。

 演出家蜷川幸雄氏(73)の提案で、けいこの合間に神奈川・鎌倉の建長寺と、埼玉・新座の平林寺を訪れた。

 小栗

 建長寺では座禅を組ませて、平林寺では禅を習わせていただいた。僧侶の方は、すごい世界で生きている。蜷川さんが言われたけど、無駄な動きが一切ない。ボクなんか、日常生活は、余分な動きだらけ。

 藤原

 (爆笑)。

 小栗

 6割ぐらいが無駄。でも、禅寺では、1日のすべてに無駄がなく、寝ることすらわが事でなく、寺の決まり事。1つの人間のあり方として面白い。

 藤原

 修行に使うような、普段入らせてもらえない禅堂などに入れさせてもらいました。

 小栗

 普段の小栗旬は、規律とかが好きではないんです。でも、日本の多くの作法や決め事には、動きに必ず意味があるってことを、あらためて知らされた。

 蜷川氏は演劇とは「うそのないうそをつくもの」という。

 小栗

 やって(演じて)いることにうそはない。でも、本物(佐々木小次郎)ではないから、必ずうその表現をしてるわけです。そこは見えればいいと、芝居でカバーしろと。ただ、そのためには、本当を見て、うそのないうそをつけるようになるしかないと言われてます。だから、いろいろ学べたことが、すごく大きい。やっぱり、今のボクが吸収してるのは「ムサシ」に関することですね。それで初日からのアウトプットに備えてる。

 没頭したまっすぐな演技で勝るという藤原が幅広い視線で吸収し、俯瞰(ふかん)な視線でかわす演技が得意という小栗が、一極にアンテナを張っていた。「ムサシ」を通じて2人が新境地に足を踏み入れている。

 ◆藤原竜也(ふじわら・たつや)本名同じ。1982年(昭57)5月15日、埼玉県生まれ。蜷川幸雄演出「身毒丸」の主演オーディションで選ばれ、97年ロンドン公演で舞台デビュー。「唐版滝の白糸」「ハムレット」「ロミオとジュリエット」など蜷川作品のほか、野田秀樹演出「オイル」に主演。主演映画「バトル・ロワイアル」「デスノート」が大ヒットし、04年NHK大河「新選組!」に出演。178センチ、血液型A。

 ◆小栗旬(おぐり・しゅん)本名同じ。1982年(昭57)12月26日、東京生まれ。小6で児童劇団に入団。95年のNHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」でデビュー。連ドラ「貧乏男子」「花より男子」などに出演し、映画は「あずみ」「キサラギ」「クローズZERO」、舞台「カリギュラ」がある。父小栗哲家氏はボローニャ、ウィーン国立歌劇場の日本公演を手掛ける舞台監督。183センチ。血液型O。

 ◆「ムサシ」は、さいたま市彩の国さいたま芸術劇場(3月4日~4月19日)と、大阪梅田芸術劇場(4月25日~5月10日)の約2カ月間で全74公演。すでに前売り券は完売。藤原、小栗をはじめ蜷川氏お気に入りの鈴木杏、白石加代子、吉田鋼太郎らが出演する。井上ひさし氏の脚本は、まだ仕上がっていない。

 [2009年2月27日12時20分

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