<第13回日刊スポーツ・ドラマグランプリ受賞者発表>

 第13回ドラマグランプリ助演男優賞は、TBS系ドラマ「JIN~仁」で坂本龍馬役を好演した内野聖陽(41)が初めて受賞した。「いつかはやりたかった」という龍馬役だけあって、何度か龍馬の故郷高知を訪れて念入りに役作りを行った。明るく豪放磊落(らいらく)な内野・龍馬を見事に作り上げ、ドラマの高視聴率にも大きく貢献した。

 トロフィーと表彰状を手にした内野は「賞なんて久しぶりだなあ。本当にうれしいし、ありがとうございます」と素直に喜んだ。

 「JIN」で内野は、現代からタイムスリップした医者南方仁(大沢)を助ける坂本龍馬を自由闊達(かったつ)、実に楽しそうに演じた。「立ち居振る舞いもさることながら、一番大事にしたのは龍馬の人間性。『額縁のない男』というか、既成の概念にとらわれない自由な発想や感性を持った人物だったと思うので、どこにも収まりきらない感じを意識して、型にはまらず伸びやかに、魅力的な龍馬になるように演じました」。

 最初はそんな役作りに不安もあったという。「うっとうしすぎるんじゃないか、やりすぎてしまったんじゃないかという不安もあった。でも、プロデューサーは『大丈夫、大丈夫』と言うし、『作品にはまっている』と言ってくれる人もいた。自省的に悩み、苦しむ主人公を軸にしたドラマだったから、世話物的な龍馬で良かったのかもしれないですね」。

 龍馬はやりたい役の1つだった。「自分の中ではいつかはチャレンジしてみたい役として、心の奥底にしまい込んでいた」。それだけに、収録前に役作りのため高知に何度か足を運んだ。「龍馬を生んだ土佐がどんなところなのか。気候、風土、人柄を知りたかった。桂浜に立って、土佐の南国気風や風土に触れて初めて気付いたことも多かった。土佐の言葉は乱暴に聞こえることもあるけど、とても細やかで温かく、人懐っこかったり、あまり上下関係を気にしない。そういうところも龍馬の親しみやすさにつながっているのかなあ」。

 すっかり高知のファンにもなった。「昔からの友だちみたいに、毎回朝まで飲むコースになってしまった。そのおかげで、土佐弁も細かなイントネーションも含めて身についたかな。行かないとダメだよね」。高知での放送では視聴率が30%を超えた。「僕の龍馬を気に入ってくれたんですかね。『土佐弁をここまできちんとしゃべってくれたのは内野さんが初めて』とまで言ってくれました」。

 共演した大沢も「自分が今まで見てきた中で、最高の龍馬を演じている」と絶賛した。内野も「共演者に触発されて、いい意味で競う演技ができ、切磋琢磨(せっさたくま)し合った」と振り返る。龍馬はまた挑戦したいという。「年齢的に龍馬が亡くなった31歳からどんどん離れていくので、早くやってみたい」。

 現在はテレビ朝日系ドラマ「臨場」(水曜午後9時)に主演している。昨春の第1弾が好評で、今回が第2シリーズ。「前回に届かなかった部分もあり、またやりたかった」。人気作家横山秀夫氏の原作で、切れ者検視官の倉石義男を演じている。「倉石は死者に対するまなざしが温かい。原作をリスペクトした上で、内野流倉石を作ってます。心を自由にして、映像の中で魅力的な倉石により磨きをかけたい」。高視聴率をマークしており、内野の新たな代表作になっている。【林尚之】

 [2010年4月29日12時23分

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