大地震後、宮城県気仙沼市沖の大島で民宿を営む元タレント「気仙沼ちゃん」こと白幡美千子さん(年齢非公表)との連絡が取れなくなっていることが13日、分かった。大島は大津波で甚大な被害を受け、島内各地も炎上。多くの島民が依然、取り残されており、詳細な被害状況も不明な惨状だ。70年代にフジテレビ系「欽ちゃんのドンとやってみよう!」に出演。お茶の間の人気になった白幡さんだが、同民宿で働く女性は「島の現在の状況すら、まったく分からない」と心配している。

 白幡さんは地震当時、大島東岸の長崎地区で自身が営む民宿「アインスくりこ」にいたとみられる。同民宿従業員で、たまたま地震当時、気仙沼市本土にいた女性によると、地震発生後、同民宿の電話や、白幡さんの携帯電話に何度連絡しようとしても、まったくつながらない状態が13日まで続いているという。

 この女性は「地震が起きた11日には、午前中、彼女は民宿にいた。その後私は船で気仙沼に渡ってしまい、その後、まったく行方が分かりません。本当に心配です」と話した。同民宿は、島中部東岸から約50メートル離れた位置にあり、海から数十メートル程度の高台に立っている。ただ、市によると、大島の東岸中部付近は大津波の水没地帯もあるという。

 気仙沼ちゃんは70年代後半、「欽ちゃんのドンとやってみよう!」に「気仙沼出身」と、方言を売りに出演。その人柄で茶の間の人気者となった。約30年前結婚し、その後、現在の民宿を営んでいる。

 大島の詳細な被害状況は依然不明だ。島民によると、島の人口は三千数百人。市によると地震後、島内各地で火災が起き、島の東岸中部、北部沿岸などが水没。自衛隊のヘリで一部島民が救助され始めているが、13日現在も多数の島民が取り残され、連絡が取れない状況が続いている。島との交通手段は定期船だが、船も津波で航行不能。気仙沼市の港に打ち上げられた船もあった。島にいた人は島から移動できず、本土にいた島民も自宅に戻れない状態だ。

 地震当時、気仙沼本土にいた別の島民女性は「島に帰りたいけど、交通手段がない。島の人と、携帯電話も固定電話も、無線も、まったくつながらない」。島民男性は「ひたすら情報が入るのを待つのみ。自宅の様子が分からず、本当に心配だ」と話した。【広部玄】

 ◆気仙沼ちゃん

 本名・白幡美千子。生年月日非公表、気仙沼市出身。77年から78年にかけてフジテレビ系「欽ちゃんのドンとやってみよう!」に一般公募を経て出演。素朴なキャラクターと東北弁で「気仙沼ちゃん」として人気を得た。80年に地元で結婚し、気仙沼湾にある大島で民宿のおかみをしている。07年にテレビの旅番組で萩本欽一と再会している。