「エルビス・オン・ステージ」と「ーオン・ツアー」が公開されたのは中学生の時だった。きらびやかなハイネックのジャンプスーツ姿が永遠の「エルビス像」として脳裏に焼きついている。

「EPiC/エピック エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート」(15日公開)は、長らくの不振からカムバックしたこの70年代初頭のステージを中心に、プレスリーの雄姿を最新技術で復元した。

近作の劇映画「エルヴィス」や「プリシラ」が、その苦悩の裏側を描いたのとは対照的に、ドキュメンタリーの今作はひたすら表舞台のかっこよさにスポットを当てている。

正直なところ、中学生当時に聞いていたのはビートルズやローリングストーンズで、せんだみつおがモノマネしていたプレスリーは「年配者向けのエンターテイナー」という印象が強かった。

一方で、「ーステージ」と「ーツアー」を見てハマった友人が1人いて、しきりにその魅力を語っていたことを覚えている。最新技術でレストアされた今作の生き生きした姿を見て、あの時の友人の気持ちが分かる気がした。

ハードスケジュールでステージを続けても決してすり減らない甘い声、虚空を見るような瞳の美しさ、まつげが異常に長い! そしてリズムに合わせて震えるように踊る体…。カメラは恍惚(こうこつ)とした女性ファンの表情を次々に映すが、生々しく復元された映像は同性の身にもうっとりするような魅力がある。

「華麗なるギャツビー」(13年)のバズ・ラーマン監督はステージの再現に止まらず、未公開フィルムを掘り起こし、インタビューや会見の生の声を伝える。悪徳マネジャーと言われたパーカー大佐の事情で北米以外の公演が行えなかったことや、英国発のロックバンド隆盛の「圧」など、負の部分を受け流すおおらかさも伝わってくる。

気心の知れたバンドメンバーやコーラスガールとのオフショットも楽しい。「キング」ぶらないフランクなやりとり。ここで見る限りとってもいい人だ。ステージでは、ファンからのキスもしっかり唇で受け止める。オーラがすべてを圧倒していたからなのだろうが、○○ハラやコンプラとは無縁だった時代の「良き部分」が伝わってくる。

さわりだけの曲もあるが、「好きにならずにはいられない」から「ドント・フライ・アウェイ」まで全27曲を収録。ザ・エルビスがぎゅぎゅっと詰め込まれた97分だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)