広島県出身の歌手奥田民生(46)が22日、故郷の世界文化遺産、厳島神社で「奥田民生ひとり股旅スペシャル」と題した奉納ライブを行った。奥田が世界遺産でライブを行うのは初。同郷の吉田拓郎、Perfumeのカバー曲を歌うなど「広島ずくめ」のサービスに800人のファンは大喜び。心配された雨も上がり「晴れ男ぶり」は健在だった。04年に旧広島市民球場でライブを行った奥田だが、故郷広島の名所に新たな音楽の足跡を残した。

 厳島神社はやはり、奥田にとって特別な場所だった。ステージは本殿をバックにした高舞台で、海と海上の大鳥居がくっきり見渡せる。潮の香りが漂い、歌に交じって風と波の音が聞こえる幻想的なシチュエーション。最後の「イージュー★ライダー」を歌い終えると、何度も両手でVサインをし「ありがとう!」を連呼した。会場からは「民生!」「よっ!

 広島大使」の声援が飛んだ。

 広島愛がたっぷり詰まった「広島ずくめ」のライブだった。厳島神社は幼いころに遠足や観光で訪れた思い出の名所だという。故郷にちなみ、井上陽水とのコラボ曲「HIROSHIMA」でスタート。厳粛な雰囲気で、最初はさすがの奥田も「申し訳ない気持ちで…。普通、こういう所でできないから」と緊張気味だった。

 それでも「広島の大先輩の曲を歌います」と、広島皆実高の先輩である吉田拓郎の「今日までそして明日から」、続けて広島出身の3人ユニットPerfumeの「レーザービーム」を歌うと、800人のファンのボルテージが一気に高まった。奥田は「広島を代表する2組のアーティストですから。神様もきっと、祝福してくれているでしょう」と笑わせた。

 天候も味方に付けた。前日のリハーサルは豪雨でこの日も雨が心配されたが、本番は雲1つない星空だった。「晴れ男」の奥田は、04年の旧広島市民球場ライブも90%の高い降水確率の予想をくつがえし、雨を回避している。今回も故郷の大舞台に「晴れ」を引き寄せ「雨降ったら1時間でやめようと思ったんですよ。いやあ、降らなかったですね」と話した。

 クライマックスシリーズ進出を逃した広島カープには「いいかげんに勝ちんしゃい」とエールを送る。最後は「私の地元に付き合っていただいてありがとうございます。なかなか経験できないことが経験できて、個人的に良かったと思います」と話し、ステージを降りた後、神殿に深々と頭を下げ、感謝していた。【岩田千代巳】