歌手谷村新司(63)が20日、東京・国立劇場で「日中国交正常化40周年記念コンサート」を開催した。開演前には、中国・北京の国家大劇院で25日に開催予定だった記念コンサートが、沖縄・尖閣諸島の国有化問題で延期になったことについて会見した。音楽を介して中国と30年以上交流を続けており、「最後の砦(とりで)が文化だと思っている」と友好関係構築への音楽の力を強調した。

 開演1時間前、取材陣の前に姿を見せた谷村は「私もたくさん思いはありますが、聞きたいことがおありでしょうから、どうぞ質問してください」と切り出した。谷村によると12日に、中国での記念コンサートを主催する中国人民対外友好協会から電話で延期を伝えられたという。その後、14日付で同協会から正式文書が届いた。「国と国の問題があって、そういうふうに捉えたんだなと。残念でしたが、決してネガティブには捉えなかった」という。

 中国との関わりは深い。81年8月、アリスの一員として日本のロック・ポップス系で初の単独公演を北京で開催した。04年には上海音楽学院の教授に就任。日中国交正常化30周年でも公演を行い、10年4月には上海万博開会式で「昴」を歌った。30年以上にわたり日中関係を双方の立場から見てきた。尖閣諸島の国有化の反日デモが連日報じられているが、「日本で流れている中国の映像、中国での日本の映像は、普通とは違う映像が流れている。それを流し続けると互いに嫌いになってしまう」。さらに「国と国が本気でけんかしてこなかった。当たり障りなく過ごして、何が中国の人の痛みなのか、なぜ日本人が傷つくのか学んでこなかった。相手とこちらの痛みを出し、話し合うことが大事」と対話の大切さを訴えた。

 10月26日に上海でも記念コンサートを予定しているが、開催は未定という。「私はどんなことが起きようとも穏やかに歌ってきた。だから今回も変わらない」。

 この日は「昴」「群青」や日中国交正常化30周年記念曲「宝石心」や「サライ」などを歌った。「国と国というが、国を作っているのは人。1人の心が動いたら、友だちの心も動くかもしれない。政治や経済がダメになっても、最後の砦は文化だと思っています」。歌の力を信じ、歌い続けることを誓った。【笹森文彦】

 ◆谷村新司と中国

 81年8月に北京で行った国交正常化10周年公演にアリスのメンバーとして参加。84年から中国を含むアジア歌手を集めた「PAX

 MUSICA」を開催。01年に上海アジア音楽祭に特別出演。02年に北京で行った国交正常化30周年公演の出演とプロデュース。03年に中国のSARS撲滅支援公演を大阪で開催。04年3月に上海音楽学院の教授に就任。07年4月に温家宝首相来日歓迎晩さん会で「昴」を歌唱。10年に上海万博開幕式で「昴」を歌唱。