「2014神宮外苑花火大会」(日刊スポーツ新聞社主催)が16日、東京・神宮球場や秩父宮ラグビー場などで開催された。秩父宮では石井竜也(54)らが、35回記念大会にふさわしい一夜の歌祭りを華やかに盛り上げた。

 石井が極上の祭りを演出した。午後7時32分15秒。「花まつり」を歌い終えて「ヨォーオ」と見えを切った瞬間に、花火が打ち上がった。秩父宮ラグビー場のトリとして、寸分の狂いなく、花火にたすきを渡した。

 ここまでドンピシャのタイミングは、めったにない。「完璧なタイミングで神懸かってたね。お客さんも盛り上がったまま花火に入ってくれたんじゃないかな」。芸術家石井のこだわりは、半端ない。曲の間奏部分などを巧みに自己調整して、最高の瞬間を狙っていた。アーティストと花火による見事なアートを描いて見せた。

 東日本大震災復興チャリティーの中でも、石井の出身地茨城に特化した会場を、メリハリをつけたライブで、追悼と楽しさを両立させた。1曲目をミリオンヒット曲「浪漫飛行」で一気に盛り上げると、直後のMCで「昨日は終戦記念日。東日本にも、あんなことが起こりました。ここでみんなで手を合わせて、1回だけ黙とうをしましょう」。そう呼び掛けて祈りを終えると「ヨッシャー!!

 これでバカやっても大丈夫!」と気持ちを切り替えて、お祭り騒ぎを始めた。古来の祭りの真意を理解する男の粋な計らいだった。

 バンドと6人ものホーン隊らを従えて、ラテンメドレーやディスコメドレーで、観客を立ちっぱなしにさせて、一緒に踊らせた。「平和を歌う歌とかを入れて、誰でも分かりやすいようにしたよ」。初見の観客も、ノれる工夫をしていた。MCを削って歌い続けた代わりに、最後の「花まつり」の歌詞の中には「茨城ガンバレ!」と、さりげなくエールを込めてもいた。

 全17曲披露は、もちろん神宮花火大会35年の歴史で、最も数多く歌った記録だ。あらゆる意味で、正真正銘の“お祭り男”だった。【瀬津真也】