【ゴイアニア(ブラジル)29日(日本時間30日)=木下淳】リオデジャネイロ五輪日本代表FW久保裕也(22)が、逆転で本大会に出場できる可能性が出てきた。所属するスイス1部ヤングボーイズから五輪派遣を拒否されている問題で、交渉のため緊急渡欧していた日本協会の霜田正浩技術委員(49)が帰還。「出場の可能性が復活した」と軟化させ、30日のリーグ戦の結果を受けて31日に再協議する状況まで押し戻した。

 スイスからブラジルに戻った霜田氏に、少し笑顔が見えた。久保の派遣を認めないとするヤングボーイズとの折衝を終え「条件次第では招集に協力してもらえる、というところまで差し戻してもらいました」。一気に逆転招集までは勝ち取れなかったものの「少し出場の可能性が復活した」。明るい表情が示す通り、前向きな回答を持ち帰った。

 問題は27日、唐突に表面化した。FWに負傷者が出たヤングボーイズが、公式サイトで一方的に派遣拒否を表明。日本協会にも電子メールで通達した。霜田氏は翌朝に急きょ渡欧。まず久保と会い「五輪への強い思いを確認」してから、強化責任者のピッケル・スポーツディレクターと交渉した。これまで霜田氏や手倉森監督が足を運んで誠意を示してきた経緯もあり、相手も軟化。派遣の可否を保留した。その条件として30日(日本時間31日未明)のリーグ第2節ルガノ戦の結果を受け、31日に再協議することで折り合いをつけた。

 そこで新たな負傷者が出るかどうかが1つの焦点になりそうで「主力級に、けが人が7人も出ているため彼らは派遣が難しいと言っている」と霜田氏。8月3日には欧州CL予選3回戦の第2戦シャフタル・ドネツク(ウクライナ)戦があり、ここまで引っ張られる可能性も否定できない。1日でも早く合流させたいが、FIFAが登録変更期限に設定した1次リーグ初戦の24時間前、をリミットに判断することになりそうだ。

 当初は「夢の大会を断念せざるを得ないのか、と落ち込んでいた」という久保だが、変わらず出場を熱望している。手倉森監督も「悩みに悩み抜いて18人に絞った。やっぱり俺の気持ちは(久保)裕也を待ちたいな」と粘る気だ。その中でバックアップメンバーの新潟FW鈴木らは31日に日本を出国し、久保より前に合流する。第1、2戦の会場マナウスの高温多湿に対する順化期間も考慮しながらの難しい決断を迫られる。