元日本代表で横浜FCのFWカズ(三浦知良、48)と札幌MF小野伸二(35)が4日、ニッパツ三ツ沢球技場で07年12月以来7年7カ月ぶりに対戦した。結果は0-0ドローも、日本サッカー界をけん引してきたベテラン2人のプレーは、見応えあるものだった。

 カズは6月28日の水戸戦でJ最年長弾記録を更新した直後で、ボールが渡る度にスタンドが沸いた。小野は日本最高と言われるテクニックを、さりげなく披露。左サイドでキープし、味方が背後を追い越すと、普通に縦に流しても通せるところを、一度戻して背後で、ちょんと軽く蹴り出してみた。中央から左にサイドチェンジする際は、左足で柔らかい回転をかけ味方にピンポイントで通した。観客を喜ばせる小野らしい“おまけ”が随所にあった。

 守備的なチームが多いJ2は、互いにリスクを負って仕掛けることをせず、相手の出方をうかがう間に90分が過ぎているというような試合も見かける。そんな状況の中、カズや小野のように、ワンプレーで観客を楽しませようとしている選手は、光って見える。

 結果も大事だが、見たい選手が1人でもいれば観客は集まる。86年5月18日、当時ブレーメンの奥寺が見たくて、わざわざ茨城の田舎から電車を乗り継ぎ、国立競技場へ行った。キリン杯決勝、ブレーメン対パルメイラス。奥寺だけでなく、パルメイラスのベンチには19歳のカズがいた。当時中1の記者は、ブラジルのクラブに日本人がいて驚いた。その試合でカズは出場しなかったが、90年に読売クラブ入りするころには、かなり話題になっており、国立で見ていたことが、茨城ではプチ自慢になった。

 札幌は10年に中山、昨季は小野、今季は稲本とW杯を経験したスター選手を獲得。昨季は他にもブラジル代表FWロビーニョ、元イタリア代表MFデルピエロ、元コートジボワール代表FWドログバら世界的スターにも、代理人を通じ条件提示した。当然、金銭的ハンディーがあり、現実的な話にはならなかったが、ロビーニョには年俸3億円を提示したという。チーム全体の人件費が約5億円のクラブでは破格だが、野々村芳和社長は「採算は取れると考えてたよ」と言う。

 小野は6月29日大分戦で今季初出場した際「遊び心が足りない」と反省した。プロスポーツは楽しませるもの。クラブ経営も、少ない投資では、それなりの夢しか生まれない。勝敗や採算を度外視してはいけないが、夢を与えるには経営者も選手も質の高い「遊び心」が必要-。野々村社長のチャレンジや、カズや小野のプレーを見て、そんなことを思った。【永野高輔】


 ◆永野高輔(ながの・たかすけ)1973年(昭48)7月24日、茨城県水戸市生まれ。両親が指導者だった影響で幼少期からフェンシングをたしなむ。競技歴15年。00年富山国体出場。小5で、85年つくば科学万博の開会式に出演。09年から札幌担当。