【プノンペン13日】17日のW杯アジア2次予選カンボジア戦の試合会場は厳しい環境だった。カンボジアリーグ(Cリーグ)のカンボジアンタイガーFC監督兼選手の木原正和(28)ら4人の日本人選手によると、人工芝のピッチはゴムチップが舞い、シャワー室にはゴキブリが出るという。

 プノンペン中心部からトゥクトゥク(荷台付きバイク)で15分ほど走ると、住宅街に会場となるオリンピックスタジアム(約5万5000人収容)が現れた。ピッチに通じる通路にはカギがかかっていたが、普段は市民の立ち入りは自由。6月末に人工芝が完成した直後には、ピッチ上でピクニックをする人が多く見られたといい、ある意味では普段は万人の“公園”だ。

 見た目では人工芝のピッチは緑のじゅうたんのように美しかった。だが、会場でプレー経験を持つカンボジアンタイガーFCの木原監督兼選手らに聞くと印象は一変した。

 木原 芝が深くて、ゴムチップがまかれているのでボールがまったく走らない。天然芝の感覚でパスを出すとカットされるリスクが高いですね。地上戦よりセンタリングなどの空中戦も手。ピッチが硬くて足への負担も大きい。疲労回復も大変ですよ。

 ピッチがぬれるとボールが走るという。だが、会場に散水設備はなく、小雨を祈るしかない。スライディングをするとゴムチップが舞い上がり、口や目に入ってプレーに支障をきたすという。さらに周辺の駐車場は砂地のため、風が吹くと砂煙が舞う。DF友広壮希(24)は「コンタクトレンズの選手は、洗浄液は必ず持ち歩いた方がいいですね」と“忠告”した。

 ロッカールームは狭く、20人ぐらい入るとすし詰め状態になって蒸し暑さが増すらしい。ベンチも簡易なもので、普段は選手たちは床に座って準備するという。シャワーは水しか出ない。ひんぱんにゴキブリが出るとか。FW吉原正人(24)は「7匹のゴキブリ集団を見たことがあります。トイレには紙がないので持ち込みは必須です」。GK吉田康幸(33)は「水のシャワーはキツイ。宿泊ホテルとのギャップが激しいので、日本代表の選手たちは驚くと思います」。

 11月は乾期だが、今年は夕方にスコールが襲う日が多いという。試合中ならピッチは水たまりができるほど。この日午後には日本代表スタッフが会場を視察。ピッチの状態を確かめた後、施設を見学して地元スタッフと言葉を交わし、厳しい表情で会場を後にした。日本代表は過酷とも言える環境を克服しないと勝ち点3は奪えない。【岩田千代巳】

 ◆カンボジアンタイガーFC 13年に日系企業を母体にトライアジア・プノンペンFCの名で創設。同年、カンボジア2部リーグを制し1部リーグ(Cリーグ)に昇格。14年は5位。15年3月、東京のブランドコンサルティング会社フォワードの代表、加藤明拓氏(33)がオーナーとなり、カンボジアンタイガーFCに名称変更。日本人コーチを置き、地元の選手育成に力を入れる。主要フロントスタッフは日本人で、4人の日本人選手が在籍。今季はリーグ3位でプレーオフに進出し、11月22日、12月11日に3位決定戦を戦う。

 ◆サッカー日本代表と人工芝 11年11月、ザッケローニ監督時代にW杯アジア3次予選北朝鮮戦(金日成競技場)のピッチが人工芝だった。不慣れなピッチでパスが通らず、相手選手の退場で数的優位に立ちながらも0-1で敗戦。ザッケローニ監督の就任17戦目で初黒星を喫した。