なでしこジャパンが、8月19日に東京・国立競技場で凱旋(がいせん)試合を行うことが22日、分かった。9月に始まるロンドン五輪予選へ向けた壮行試合も兼ねて、5万4224人収容の“聖地”で、なでしこリーグ・オールスターと対戦する。近日中に正式発表される。W杯初優勝で米国やブラジルなどの強豪国から対戦オファーが届いているが、国内リーグ活性化のため、あえて「なでしこ対なでしこ」に決めた。試合前にはファンへの優勝報告会も予定している。

 「なでしこ対決」は当初、8月21日に東京・西が丘サッカー場で開催する予定だった。しかし、なでしこジャパンのW杯初優勝で状況が一変した。国内での人気と注目度が急上昇。明日24日に再開されるなでしこリーグにも観戦の問い合わせが殺到した。日本サッカー協会側は7258人収容の西が丘ではとても観客を収容し切れないと判断。8月19日に予定が空いていた国立競技場での開催を決めた。

 目前の強化より、なでしこリーグの将来を選んだ。W杯優勝直後から米国、ブラジル、ドイツ、イングランドなど海外の強豪国から対戦オファーが届いた。なでしこジャパンにとって、9月のロンドン五輪予選直前の願ってもない強化試合が組める。一時は「なでしこ対決」の中止も視野に入れていた。しかし、最終的にはオファーをすべて断って、凱旋試合の相手に「なでしこリーグ・オールスター」を選んだ。

 日本協会幹部は「なでしこジャパンの供給源はなでしこリーグだし、国内リーグが活性化しないと、女子代表の将来もない。今回はリーグをアピールできる絶好のチャンスなので、Aマッチを諦めました。多くのなでしこファンにリーグをアピールしていきたい」と話した。現在、日本協会では、各テレビ局と金曜日のゴールデンタイムでの地上波生中継を目指して交渉を進めている。テレビ局との調整がつき次第、日本協会から正式に発表されることになる。

 19日の凱旋試合はW杯優勝のファン報告会も兼ねる。同代表は8月17日に再集合し、19日の試合の後も国内合宿を続け、同28日に中国に向かう。9月1日に中国で始まるロンドン五輪アジア予選前の壮行試合でもある。試合前に佐々木則夫監督(53)がファンへ感謝の気持ちを伝え、五輪予選への意気込みなども披露する。場内に特別ブースを設置し、W杯表彰式で選手らが掲げた優勝トロフィー(W杯)を展示する案も浮上している。

 なでしこジャパンは現在、社会現象になるほど注目されているが、その勢いがリーグ戦につながるかは未知数だ。同リーグは無料試合も多く、平均観客数が1000人を下回る。リーグ所属の代表選手でプロ契約はMF沢とFW大野ら数人だけ。ほとんどの選手が昼間に仕事をしている。FW永里もポツダム(ドイツ)移籍前まで飲食店でアルバイトをしていた。W杯優勝直後、沢らが「これからリーグ戦が再開されるので応援してください」と、テレビカメラに向かって必死に呼び掛けていた。

 W杯優勝に続いて、今回の凱旋試合は国内の女子選手の環境を変える大きな1歩になる。5万人の大観衆に、そしてテレビで観戦する全国のファンに、改めて女子サッカーの面白さをアピールする最高のチャンス。リーグが活性化すればプロ契約選手が増え、代表強化にもつながる。サッカーを始める女の子も増える。将来の栄光へ、なでしこが再び一丸となって、女子サッカー、国内リーグの魅力を惜しげなく披露する。