【サンパウロ(ブラジル)1日=エリーザ大塚通信員】ザックジャパンが世界屈指の強豪国3連戦をW杯本番に向けた最高の腕試しにする。来年6月15日(日本時間同16日)に開幕するコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)ブラジル大会の組み合わせ抽選会が行われ、日本は1次リーグA組でブラジル、イタリア、メキシコと同組に入った。10月の親善試合で惨敗したブラジル、ザッケローニ監督(59)の母国で欧州2位のイタリア、中米の雄メキシコとの3連戦。貴重な経験を積むことでさらなる進化へとつなげる。

 ザックジャパンがW杯本番に向けて、惨敗のリスクすらある腕試しに挑む。6月15日の開幕戦で開催国ブラジル、同19日(日本時間同20日)の第2戦はイタリア、そして22日(同23日)の第3戦でメキシコと激突。ザッケローニ監督は抽選会後の会見で「率直に言ってタフな組に入った印象だ。本番までにいい準備をしていきたい。こういう強豪とただ試合をするのではなく、どう渡り合えるのかを追求したい」と断言した。

 抽選会に出発した11月26日には「イタリアのメディアが注目するくらいだろう」と笑っていた母国イタリアとの対戦がついに実現した。今夏の欧州選手権を視察した際に「堅守速攻に加えスペインのようなパスサッカーを取り入れている」と進化を感じた母国との一戦は、実は日本代表監督就任直後から熱望していた。この日は「自分がイタリアと試合をする時は、普通の試合だと考えたい」と淡々と話したが、指揮官の意地が示される戦いになる。

 抽選会前からブラジルまたはスペインとの対戦を望んでおり、希望通りブラジルと激突する。10月の親善試合では世界最高の個人技と緩急に翻弄(ほんろう)されており、わずか8カ月でどれだけ差を埋められるか成長度が問われる。メキシコは組織的で巧みなパスサッカーが持ち味。個性の違う3カ国と本大会1年前に腕試しできるのは大きい。

 ただ、ザッケローニ監督は「我々の目標はW杯本大会でいかに良い戦いをするか。コンフェデ杯の6月は(上旬に)W杯最終予選もあり長い合宿ができる」と話しており、強豪との真剣勝負と同時に、チームの熟成時期に充てる意図もある。

 さらにW杯ブラジル大会で世界上位に食い込むため、必須となる気候への対応を実戦を通して経験できる「プレ大会」となる。初戦ブラジル戦が行われるブラジリアは乾燥しており、6月の平均最高気温は25・2度で、同最低気温が13・3度と寒暖の差が激しい。逆にイタリア戦が行われるレシフェは高温多湿。同最高気温が28・8度、同最低気温は21・6度。6月の降水量は東京の倍で、まさに「熱帯」のような気候だ。メキシコ戦は再び乾燥しているベロオリゾンテで戦う。

 ブラジルの6月は一般的には冬に当たるが、南北が長いために北部は高温多湿で、中部より南は日本の秋や冬のような気候帯となる。本大会でもこの気候への順応が鍵になるだけに、強豪国相手に「乾燥→高温多湿→乾燥」という順番で対戦できるのは願ってもない機会と言える。

 「日本よりFIFAランクが上の国ばかりだが最近の日本は変わっており、選手が欧州で経験を積み代表のレベルが高くなっている。コンディションもポイントになる」。ザッケローニ監督が率いる日本が世界屈指の強豪国との3連戦でさらなる成長を図る。

 ◆コンフェデ杯

 サウジアラビアが主催し、92年と95年に開催されたインターコンチネンタル杯が前身。3回目の97年大会からFIFA管轄となり名称も現行のものとなった。03年のフランス大会までは2年に1度開催されていたが、05年のドイツ大会からは「プレW杯」の位置づけとなり、4年に1度の間隔でW杯本大会前年にW杯開催地で行われる現行形式となった。最多優勝はブラジルの3回。<A組3代表メモ>

 ◆メキシコ

 北中米カリブ海王者のメキシコとは、過去の対戦成績は1勝3敗。05年のコンフェデ杯ドイツ大会1次リーグで1●2で敗れて以来の対戦となる。メキシコは組織的な守備と巧みなパスサッカーから得点を狙う。前線には香川の同僚でスピード豊かなエルナンデス(マンチェスターU)、こうかつな点取り屋フランコの2トップ。中盤にはトットナムに所属し、元バルセロナのMF・Gドスサントスがゲームをつくる。日本はメキシコの組織的な守備をいかに崩すか。さらにパスサッカーを封じることができるかがポイントになる。

 ◆イタリア

 日本がイタリアと国際Aマッチで対戦するのは、埼玉スタジアムのこけら落としとなった01年11月7日以来、2回目。6万人以上を集めた初対戦ではFW柳沢のゴールもあり日本が1-1で引き分けたが、今回のイタリアは欧州選手権2位の難敵だ。FWバロテリ、カッサーノの2トップにMFピルロが自由自在のパスを供給。GKブフォンを中心とした守備も「カテナチオ」の国らしく堅い。さらにプランデリ監督が巧みなパスサッカーを導入。今までの堅守速攻のイメージを脱却し、進化を遂げている。厳しい戦いとなりそうだ。

 ◆ブラジル

 10月16日に中立地ポーランドで対戦した際には序盤はパスをつなぎ好機をつくれたものの、途中からは完全にペースを握られ、0-4で完敗。通算成績も2分け7敗と圧倒的な実力差を示された。ブラジルはFWネイマール、フッキ、MFカカ、オスカルら攻撃陣に注目が集まるが、ボランチやDF陣も世界屈指の陣容を誇る。攻撃の緩急の付け方が抜群で攻守の切り替えの速さは世界屈指。10月の対戦で日本は急なスピードアップや相手のミスからのカウンターの前に翻弄(ほんろう)された。再戦で差を縮められるか注目される。