<東アジア杯:なでしこ1-2韓国>◇27日◇韓国・蚕室五輪スタジアム

 【ソウル27日】なでしこジャパン(FIFAランク3位)が韓国(同16位)に惜敗し、東アジア杯3連覇を逃した。勝てば2位北朝鮮を得失点差で上回り優勝を手にできたが、FW大儀見優季(26=チェルシー)の1点だけに終わり、敗れた。韓国には08年5月29日のアジア杯(ベトナム)で1-3で負けて以来、5年ぶりの黒星で、なでしこはアジアでもW杯女王としての強さを見せつけられなかった。

 攻守にわたりちぐはぐだった今大会を象徴するような一戦だった。なでしこジャパンは、INAC神戸でも活躍するMF池笑然のFKで先制を許すと、後半にも池に2点目を献上した。攻撃はかつての流れるようなパスが見られず、ようやく大儀見の得点で1点差に迫ったが惜敗。試合終了の笛が鳴ると、全選手が目に涙を浮かべ、天を仰いだ。

 DFのリーダー岩清水は「2失点目がすべて。チームには申し訳ない」と涙を浮かべながら話した。優勝した11年ドイツW杯や、銀メダルを獲得したロンドン五輪のメンバーを大幅に呼び戻して臨んだ今大会。表面的な主力メンバーは同じでも、果たして同じ精神状態で臨めたかどうか。この日の試合後、涙で目を真っ赤にした主将のMF宮間あや(28=岡山湯郷)は、全員がチームのために力が出せていなかったと悔しがった。

 宮間

 自分も含めて代表のあるべき姿を見直すべき。世代が違えばチームの作り方が違って当然ですが、何とかいろんなことをごまかしながらやってきたW杯、五輪を抜けて、もうごまかしが利かなくなってきている。

 ただ精神面だけで片付けられない問題もある。なでしこの戦術は世界中で研究し尽くされている。欧州では中盤の数を増やして素早いプレスをかける守備が主流となり、なでしこはイングランドやドイツと対戦した欧州遠征で、簡単にボールを失う場面が目立った。プレスに来る相手の裏を狙うパスも不発に終わった。

 男子のイタリア代表は、リーグ最強のユベントスが3バックを採用しているため、代表でも採用するようになったという。現在、なでしこジャパンのレギュラーの多くが所属するINAC神戸と、日テレは共にボランチが1人の4-3-3システムを採用している。選手の中には「選手がプレーしやすいという意味でも、代表の戦術をクラブに合わせてみてもいいのでは」と、システムの変更を希望する声もある。

 試合後、岩清水は「ディフェンディングチャンピオンという立ち位置が良いのか悪いのか。今までそうやって戦ったことがなかったから」とつぶやいた。受け身に回ってしまった今大会。世界を制したなでしこジャパンはすべてを一から見直す時期に来ている。

 ◆なでしこジャパンの対アジア勢の敗戦

 10年5月27日のアジア杯準決勝でオーストラリアに0-1で敗れて以来。アジア圏の国に限定すれば、08年6月5日のアジア杯準決勝で中国に1-3で敗れて以来となる。日韓戦では同大会のグループリーグで1-3で敗れて以来、約5年ぶりの黒星となった。