<国際親善試合:日本2-2オランダ>◇16日◇ベルギー・ゲンク

 日本代表アルベルト・ザッケローニ監督(60)が、果敢な采配でチームに新たな可能性をもたらした。主力のMF遠藤保仁(33)と香川真司(24)をスタメンから外す大胆な選手起用で、強豪オランダを苦しめた。2人を投入した後半は押し込む時間帯が増えて、引き分けに持ち込んだ。16年前のこの日は日本がW杯初出場を決めた記念すべき日。試行錯誤が続いたザックジャパンが息を吹き返し始めた。

 指揮官は冷静だった。薄い霧に覆われたスタジアムで、ザッケローニ監督は静かに戦況を見守った。両チーム合わせて4点が入る乱打戦。終了ホイッスルと同時に、日本サポーター席からは拍手と歓声が、相手席からはブーイングが響いた。異様な雰囲気の中、同監督は興奮することなく、ベンチコートのポケットに両手を入れ、ピッチ上でイタリア人スタッフらと、談笑しながら試合を振り返った。

 ザッケローニ監督

 試合前に攻守両方やってほしいと注文を出した。前半は、守備に偏ることなく、しっかりアグレッシブにやったし、後半はスペースができて主導権を握り、中盤を制圧した。山口をフルに起用したのは実際の試合で彼を試したかったことと、3日後のベルギー戦があるのでローテーションも考えた。

 高い守備ラインを保ち、主導権を握ろうとするスタイルにぶれはなかった。香川と遠藤を投入した後半は攻勢を強めた。オランダのファンハール監督は「後半開始に2人(遠藤、香川)が入って、流れが日本に向いた。ザッケローニ監督の采配で、オランダは苦しくなり、後半はロングボールで攻めるしかなかった。うちが2-3で負けてもおかしくない試合だった」と、後半勝負のザック采配を素直に褒めた。

 6月にW杯出場を決めたが、そこから試行錯誤が続いた。直後のコンフェデ杯から始まったチームの不調で、周囲は騒がしくなっていた。10月の東欧遠征で2試合を惨敗したことでサポーターは不信感を募らせた。試合開始30分前にはサポーター席から「国内組より結果を出してない海外組の方が大事?

 ザックさん、海外組がすべて?

 今のままで6月に結果出せるの?」などと書かれた布製の横断幕がかけられていた。そんな状況の中、試合前日には原技術委員長から来年のW杯本大会までの続投を約束された。揺るぎない信頼に応える引き分けだった。

 19日(日本時間20日午前5時キックオフ)には、W杯本大会第1シードのベルギーと対戦する。オランダ戦に善戦したが、勝ったわけではない。周囲の雑音を完全に封じるため、中2日の試合に白星を挙げたいところだ。【盧載鎭】