<国際親善試合:日本1-0ジャマイカ>◇10日◇デンカS

 日本代表MF香川真司(25=ドルトムント)が10日、アギーレジャパンから緊急離脱した。前半24分にジャマイカDFの肘が顎に当たり、口の中を負傷。試合終了間際までプレーしたが、ロッカールームで「クラクラする」と不調を訴え、新潟県内の病院へ急行。脳振とうと診断され、大事を取りチーム離脱が決まった。日本(FIFAランク48位)はジャマイカ(同100位)に辛勝も、14日のブラジル(同6位)戦(シンガポール)は10番不在で戦う緊急事態となった。

 ジャマイカ戦での好プレーから急転、日本の10番が緊急離脱した。午後10時30分過ぎ、取材エリアの前を通り過ぎる香川は、メディアの方へ一瞬視線を向けた。直後、日本協会スタッフから離脱が発表された。

 前半24分にジャマイカMFワトソンと競り合った際に、相手のひじが顎にヒット。ボールがタッチラインを割ると、香川は口元を押さえた。その後、プレーは続けたが同37分にベンチ前で治療を受けた。口の中を負傷し、水で口の中をすすいだ。後半も終了間際の45分にMF田口と交代するまで出場したが、ロッカールームで不調を訴えたという。

 日本協会広報部は「戻った後に香川選手から『頭が少しクラクラする』と訴えがあった。脳振とうと似た症状が出たため、病院へ向かいます」と説明した。

 香川はすぐに新潟県内の病院で検査を受けた。9月のウルグアイ戦、ベネズエラ戦前も、当時所属だったマンチェスターUでの試合で脳振とうを起こし代表には招集されていない。約1カ月の間隔があいているとはいえ頭部の負傷だけに、チームドクター、監督と協議した結果、離脱が決まった。飛行機移動の影響が頭部に影響する可能性も考慮された。香川にとっては不運の離脱だった。

 この試合、前半は見せ場が乏しかったが、後半は一変していた。前めのポジションを取ると、ワンツーや小気味のいいパス交換の中心を担った。ザンビア戦以来、126日ぶりのゴールこそなかったが左MFで新境地を見せていた。試合後のテレビインタビューでも「代表は常に特別な場所。ゴールを取りたかったですけどね。修正していかないといけない」と意欲を見せていたが、直後に離脱となった。

 FW本田は「(香川)真司がいると起点になれるから、周りが安心して勝負どころに入っていける」と手応えを感じていた。初勝利を挙げ、ブラジル戦へはずみがついたはずだった。だが過去に勝利のない王国相手に、10番不在で挑む緊急事態となった。【高橋悟史】

 ◆脳振とう

 頭部に衝撃を受けた直後に起こる脳障害の1つ。脳が激しく揺さぶられることによって一時的に意識喪失や目まい、頭痛などの症状を伴うことがある。外傷は見られないが、重度の場合は2分以上意識を失っていることもあり注意が必要。Jリーグでは昨季5月6日の大宮-広島戦で広島GK増田が、7月31日の名古屋-鹿島戦では名古屋の日本代表MF田口が、それぞれ相手選手と接触して脳振とうと診断された。増田は入院して精密検査を行った。

 ◆香川の脳振とうメモ

 マンチェスターU在籍時の今年8月26日、イングランド・リーグ杯2回戦3部ミルトンキーンズ戦で脳振とうを起こした。今季初出場だったが、前半9分にヘディングで競り合った際、頭部を強打した。治療を受けて1度はピッチに戻ったが、同20分にMFヤヌザイと交代して退いた。チームはその後、格下相手に4失点を喫して大敗した。香川は残留に向けてアピールに失敗し、これがマンUラストゲームとなった。