J2磐田はアウェーで水戸に引き分け、貴重な勝ち点1を拾った。1点を追う後半32分、ペットボトルを蹴ってから主審に判定の異議を唱えた名波浩監督(42)が退席処分になるアクシデントが発生。チームはその7分後、CKから途中出場のMF小林祐希(23)が同点弾を決め、引き分けに持ち込んだ。チームの危機を、一丸となって戦った。

 磐田の選手も次々とベンチ前に集まり、スタジアムは異様な雰囲気に包まれた。1点を追う後半32分、MF上田康太(29)の左クロスをゴール前でFWジェイ(33)が相手DFと競り合い、そのままボールはクロスバーを越えてピッチ外へ出た。三上正一郎主審(30)が出した水戸のゴールキックという判定に、名波監督はテクニカルエリアを飛び出して猛抗議。直前にペットボトルを蹴った行為で、退席処分になることを告げられても「オレは退席でいいから、マイボールになっていることを確認してほしい」と何度も訴えた。だが、抗議は聞き入れられず、そのまま試合再開となった。

 しかし、初めて退席処分を受けた監督の勝利への執念は、選手に伝わっていた。同39分、右CKからゴール前で混戦となり、最後はファーサイドで待ちかまえていた小林がこぼれ球を左足で決めた。さらに同ロスタイムのCKでは、GKカミンスキー(24)もゴール前に上がってボレーを放つなど、チームは一丸で攻め続けた。結果は引き分けに終わったが、小林は「いつも冷静に、と言っている監督の熱い姿を見ることができてうれしかった」と振り返った。

 退席処分になった監督は、次節のベンチ入りが停止になる。ジェイは「あのシーンは、Jリーグに検証してほしい。処分が取り消しになることを願いたい」と冷静に話した。監督の代わりに指揮をとり、会見にも出席した鈴木秀人ヘッドコーチ(41)は「勝ち点1を拾えたことはプラス。気持ちをリセットして、残り試合すべて勝ち点3を取りたい」と言い切った。J1復帰へ、残り6試合にすべてをかける。【保坂恭子】