天才が、ついに開幕からピッチに立つ。J2札幌MF小野伸二(36)が、明日28日開幕東京V戦(味の素スタジアム)にトップ下で先発出場することが26日、濃厚となった。昨年は開幕直前に左膝を負傷して無念の離脱も、今季は慎重に状態を上げ、移籍後初の開幕戦出場が実現する。昨年10月に札幌移籍初ゴールを決めた味スタで再びゴールを挙げ、チームの開幕ダッシュにつなげる。

 もう失敗はしない。小野が、じっくり体をつくり上げ、札幌では初の開幕戦出場を視界にとらえた。この日は、紅白戦とセットプレーは非公開。ウオーミングアップでは列の先頭に立ち、チームを引っ張った。途中で走るコースを間違え、チーム全体に笑いを誘発。開幕を控えたピリピリしたムードを絶妙な“ミス”で、解きほぐした。

 「僕にとってスタートはキャンプではなく、やっぱり開幕戦。そこでいいスタートを切れれば、今シーズン楽しくできる。ここまでケガなくできているので、試合でもいいパフォーマンスを見せたい」。昨年は、開幕10日前の2月26日の練習試合で左膝を負傷した。3月5日に手術を受け、8日の開幕栃木戦(2-1)は埼玉でリハビリ中。仲間とともに勝利を喜べなかった1年前の悔しさを、今年こそピッチで発散する。

 昨年10月4日、札幌移籍初得点を決めたピッチ、相手との対戦になる。「去年は去年」と特に意識はしていないが、イメージは悪くない。「攻撃の選手が点を取ることで勢いづく。1点でも2点でも取れれば、自分もいいスタートになる」と開幕弾も見据えた。

 開幕直前で負傷した昨季の反省で、沖縄合宿初日から毎日、メディカルスタッフが小野と話をし、少しの張りでも練習を抑えるよう指示してきた。昨年は痛みを抱えながら「やれる」と言う小野を止められずケガが悪化したこともあり、コーチ陣が半強制的に、軽いメニューに変えることもあった。大好きなサッカーを取り上げるのは小野にとって苦痛も、あえて周囲が鬼になり状態を整えてきた。

 股関節と左臀部(でんぶ)に軽い痛みが残るも、この日最後はブラジル人選手とFK練習に励むなど、大きな支障はない。「試合の流れを読み、悪いときも悪いときなりの試合ができれば勝ち点3は取れる」。パス1本で世界をとりこにしてきた44番が、自らのタクトで、Jでは07年浦和時代以来9年ぶりの開幕戦勝利をつかむ。【永野高輔】