<J1:鹿島1-0大分>◇第32節◇23日◇九石ド

 鹿島が3試合ぶりとなる執念の勝利を挙げ、連覇へ王手をかけた。アウェー大分戦で後半10分にDF内田篤人(20)が今季リーグ戦初ゴールを挙げ、その後もチーム一丸となって大分の攻撃を阻み、1-0で逃げ切った。優勝争いのライバルを直接対決でたたき、混戦レースから1歩脱出。次節29日の磐田戦で勝利し、3位川崎Fが神戸に引き分け以下、2位名古屋が30日の札幌戦に敗れれば、連覇が決まる。

 DF内田の右足にはチームの希望が込められていた。後半10分。混戦のこぼれ球が、吸い込まれるようにゴール右にいた内田のもとに転がる。ニアサイドはGKが寄っていたが、迷わず右足を強振。射抜くような弾道のシュートがゴールに飛び込む。次の瞬間には仲間の笑顔が、内田の視界に飛び込んできた。

 今季、天皇杯や代表戦ではゴールを決めたが、リーグ戦は初得点。「今年は(故障で)Jリーグの試合に出てなくてチームに申し訳なく思っていた」。背水のW杯予選カタール戦から3日前に帰国。スタッフには相手選手のユニホームを土産に渡し、オリベイラ監督から「私にはないのか?」と突っ込まれた。時差ぼけの影響もあり、この日は午前5時に起床。眠気を振り払い、後半36分にはGK曽ケ端とともに体を張って大分FWウェズレイの連続シュートを防いだ。3戦ぶりの勝利が最高の土産になった。

 内田だけではない。総力が結集された。同監督が同38分に守備固めで送り出したのは、5月に飲酒運転に同乗する不祥事を起こし、9月末まで出場停止だったMF船山だった。今季初出場の男を大一番で起用する英断。船山が介護や清掃など奉仕活動を3カ月で20回も行い、鹿島神宮では「みそぎの儀」として白装束姿で水を浴びて猛省していた姿を知っている。何よりサッカーに打ち込む姿勢を信頼し、起用した。船山は「事件を起こしたのに使ってくれた」と感謝した。

 ロスタイムも含めた最後の10分間は時間稼ぎもした。王者らしくはない。それだけこの1勝の重みを感じていた。2連覇に王手がかかった。オリベイラ監督は試合後の控室でゲキを飛ばしたという。「いつまでもモタモタしているから、こういう状況になっているんだ。ここで乗っていかないで、いつエンジンをかけるんだ!」。鹿島が08年のゴールへ一気に突っ切る。【広重竜太郎】