J1清水GK西部洋平(29)が3日、不本意な「記憶喪失」からの完全復活を誓った。1月30日の静岡産大との練習試合でポストに右側頭部を強打して、昏倒(こんとう)。目撃したDF岩下が「死んじゃうんじゃないかと思った」ほどの大量出血と手足の震えに襲われた。幸い大事には至らなかったが、医師から8日までの安静を言い渡された。前日2日に軽いキャッチング練習を試みたがすぐに「気持ち悪くなっちゃった」。この日はピッチ周囲を歩いただけで引き揚げた。

 負傷部分は3針縫っただけですんだが、問題は別にあった。「実は…試合前にサポーターにあいさつしてからの記憶がないんです。怖いですよね」と打ち明けた。それでもGK陣最年長のベテランは、怖がったままで終わらない。記憶は吹っ飛んだが「事故の原因を知りたい」と関係者が撮影したビデオをチェック。直前の自分のプレーを客観的に分析した。「ちょっと情けない。不意にシュートを打たれて、準備ができていなかった。今季は1ボランチだから、ああいうふうに僕が孤立する場面も増えてくる。今回のことをいい教訓にしたい」。謙虚な姿勢で、災いを転じて福とする。【大石健司】