王座奪回を目指す浦和のフォルカー・フィンケ監督(62)が「天才ほめ殺し」の奇策で首位決戦の先手を打った。1日にアウェー(エコパ)で、勝ち点2差で追う首位清水と直接対決。4月30日、さいたま市内での練習後、かつて浦和に所属した清水MF小野伸二(30)について「Jリーグを活性化させる」と大絶賛した。対戦直前に敵の主力選手を持ち上げるのは異例。裏を返せば警戒している証拠で、小野封じが勝負のポイントになりそうだ。

 静岡遠征の出発直前に行われた記者会見の席だった。フィンケ監督はまるで、報道陣から「小野」の名前が挙がるのを待ち構えていたかのようだった。「初めてしっかり彼のことを見たのは、UEFA杯3回戦。将来的に成長するだろうと思っていた。Jリーグに戻ってきたことでいい影響を与えている。Jの活性化にとってもいいこと」と笑みを浮かべた。

 フライブルクを指揮していた01年11月に、小野を擁するフェイエノールトと対戦し、2戦合計2-3で惜しくも敗れた。その後も勝ち進んだ小野は、浦和から移籍した最初のシーズンで欧州タイトルを獲得した。フィンケ監督は「ボールの扱いがうまい。ビッグクラブでプレーする選手とみんな想像していた。なぜ実現しなかったのか詳しくは知らないが」と振り返った。

 首位決戦の直前に、敵を持ち上げるのは異例だが、選手たちの気を引き締め、相手には重圧をかけるための「作戦」とも受け取れる。今季リーグ戦無敗の清水に土をつけるには司令塔の小野を封じる必要がある。DF坪井は「極秘任務を遂行するので言えない」と話し、ニヤリと笑った。【山下健二郎】