その広告効果、水洗トイレ30億個分?

 鹿島が来季から、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を得た場合、胸にスポンサーである住生活グループの新ブランド「LIXIL(リクシル)」のロゴが入った新ユニホームの着用を検討していることが分かった。同社は同ブランドPRのため、プロ野球の横浜買収を検討したが不成立に終わっていた。球界では決裂ショック余波が残る中、サッカー界では「アジア圏向け告知戦略」としてACLに視線を向けている。

 住生活グループのアジア戦略の「先陣」は、Jリーグの雄、鹿島が担う。来季ACLに備え、従来の「トステム」に代えて、ユニホームの胸に「リクシル」のロゴを入れる調整が始まっていることが分かった。すでにデザイン案も準備中。同グループの木寺康広報室長は28日「鹿島には、ぜひACL出場権を獲得してほしい。その際には、おそらくロゴ変更が検討されると思う」と話した。

 同グループは傘下のトステム社が、J発足当初から鹿島を「胸スポンサー」としてサポート。トステム社の溝口副社長は「(リクシル知名度向上の代替策として)鹿島のサポートに、もう少し力を入れていきたい」と言及していた。ユニホームのロゴについて「リクシルに変える可能性もある」とも明かしていた。

 もともと「リクシル」は、アジア進出をもくろむ同グループが、相次ぐ合併でまとまっていなかったブランドイメージ再構築のために立ち上げたもの。毎年アジア全域を舞台にするACL常連クラブの鹿島は、プロ野球球団以上に、ブランド告知の媒体として価値が高いとの見方もある。

 実際ACLの1次リーグでは、人口約14億人の中国、約2億3000万人のインドネシア、約9000万人のベトナムなど大国とのアウェー戦がある。どの国も同グループの主力商品である、水洗トイレやシステムキッチンの普及率は、日本に比べ極めて低い。アジアでのブランド告知は大きな宣伝効果が期待できる。

 勝ち進めば、人口12億人のインドや、富豪ひしめく中東でも試合をする可能性がある。大会圏の総人口は30億人以上。「水洗トイレ30億個」のマーケットで、熱狂的なサッカーファンに胸のロゴは強烈な印象を与えることができる。

 さらに優勝して世界クラブ選手権に出場し、バルセロナやマンチェスターUのようなビッグクラブと対戦すれば、世界中に「リクシル」の名前が知れ渡る。横浜買収は不調に終わったが、鹿島の活躍次第では、住生活グループがサッカーの世界市場にデビューすることになる。