南アフリカW杯日本代表GK川口能活(35=磐田)が、来季大幅減俸で磐田に残留することが24日、分かった。複数の関係者によると、今季で推定年俸1億円の複数年契約最終年を迎えたが、来季は70%減の年俸3000万円の1年契約で、合意に達していることが判明した。川口自身6年在籍した磐田に愛着を持ち、今季ナビスコ杯優勝に輝いたチームに将来的な可能性を感じて決断したもよう。お金よりも磐田でプレーすることを優先した。

 川口が選んだのは、お金よりも磐田に残ることだった。複数の関係者によると、ナビスコ杯優勝で7年ぶりに日本一のタイトルをもたらした後の今月中旬までに、クラブ側から来季契約延長の金額提示を受けた。今季までの1億円から70%カットの3000万円という大減俸を提示されたが、川口は即答したという。単年契約による1年勝負。他クラブへの移籍も選択肢にあったが、36歳を迎える来季も磐田でプレーすることを選んだ。

 以前から川口は磐田への感謝の気持ちと愛着を口にしていた。昨年9月の京都戦で右足脛骨(けいこつ)を骨折し全治6カ月の重傷を負った。川口は復帰に向けたリハビリを行うため、負担の少ない入院を申し出た。クラブ側は少しでも早い復帰に万全を期すため、これを了承。約2カ月間も病院でリハビリを続けた。戦列に復帰した際、川口は「チームが僕のために後押ししてくれたから今の自分がいる。今後、それを忘れずにピッチで自分ができることを表現したい」と話していた。

 今季はけがから公式戦復帰する前に、南アフリカW杯にサプライズ選出されてチーム主将としてベスト16入りに貢献。8月の山形戦で復帰するとチームも尻上がりに調子を上げた。復帰戦こそ黒星を喫したが、後半戦に限ればここまでわずか2敗とリーグ最少。ナビスコ杯でも優勝に貢献した。日に日にさえ渡るプレーぶりに、柳下監督も「けがする前よりも安定している」と驚くほどだった。

 海外からJ復帰した選手とあって高額年俸ではあったが、磐田側も最大限評価をした上での数字だった。クラブ関係者は「復帰当初よりもあきらかにパフォーマンスが上がっているし、まだまだやれるんだということを証明してくれた。ベテランの力が今のチームには必要。誠意を込めてオファーを出したことを、本人も分かってくれた」と話している。別の関係者によると、復帰当初は2000万円での提示も検討されていたが、貢献度を評価して3000万円となったようだ。

 08年には入れ替え戦の末にJ1残留を決め、ピッチで涙を流した。今月のナビスコ杯優勝後、川口は「このチームはまだまだ強くなる可能性を秘めている。リーグ戦でのタイトルを奪うために、自分ができることを考えていきたい」と話していた。どん底を見て、ここまではい上がってきた。常勝軍団復活を証明するまで、最後方には川口が立ち続ける。