なでしこの凱旋(がいせん)会見が、Jリーガーの教材になる。W杯で優勝し帰国した直後に都内で開かれた記者会見で、優勝メンバー全21選手がそれぞれ、自分の言葉でしっかり自己主張。試合後一貫して「応援よろしくお願いします」と、特徴のないインタビューを繰り返すJリーガーには、これ以上ない手本だ。Jリーグは来季からの新人研修で、なでしこ会見ビデオを編集し、教材として採用することの検討に入った。

 凱旋会見で、なでしこの面々がマイクを手に語った言葉は、ピッチ上以上に感動を与えた。GK山郷は「背番号1番、山郷のぞみです」としっかり自己アピールのあいさつをした後、ゆっくりと優勝の思いを語り、最年少FW岩渕は「私がここにいるのは、(自分が)生まれる前からの先輩の努力があったからです」と、それぞれが自分の思い、応援してくれた被災地の方々への感謝の気持ち、なでしこの現状をしっかり説明し、テレビの向こうのファンに語り掛けていた。

 この会見は、日本中に感動を与えたのと同時に、J幹部の心にも染みた。Jリーグ佐々木一樹常務(59)は「日本女子の強さを感じた。なでしこはサッカー以外でも自分の仕事を持っていて、社会と触れる機会が多く、しっかり受け答えができている。それに比べてJリーガーは、プロとしてサッカーだけに集中できる環境ではあるが、情けないインタビューが多すぎる」と、Jの現状を嘆いた。

 実際、試合後のヒーローインタビューで「頑張りますので、応援よろしくお願いします」と、どの会場にも特徴のないインタビューが繰り返される。佐々木常務は「なでしこからいいものは見習わないといけない。来年からの新人研修で帰国会見のビデオを流して、インタビューの受け方を教育することになると思う」と、教材として採用することを明かした。

 今後、必要と判断した場合には、MF沢ら優勝メンバーを講師として招くことも検討する。マスコミ対応法の他にも世界一の帝王学も学べる、一石二鳥の効果が得られる。震災後、人気低迷のJリーグが、なでしこを見本に、人気回復を目指す。【盧載鎭】