日本協会は11日、福島第1原発事故の対応の「前線基地」として使用されてきたJヴィレッジ(福島県広野町、楢葉町)で理事会を開催した。

 理事らによる施設の視察を兼ねたもので、大仁邦弥会長(68)をリーダーとするJヴィレッジ復興サポートプロジェクト(仮称)の設立を決定した。

 現在、Jヴィレッジには東京電力の福島復興本社が置かれており、天然芝ピッチ2面が駐車場として使われ、2面は荒れた状態で放置。人工芝ピッチには未使用の汚染水タンクや資材が置かれ、観客席がある競技場のピッチには作業員の宿舎が建てられている。

 話には聞いていたが、現実を目にすると大きなショックを受けた。02年W杯日韓大会でアルゼンチン代表が合宿を行い、使用した競技場には従業員宿舎が建てられていた。ジーコジャパンのスタッフと懇親サッカーを行った天然芝ピッチは駐車場になっていた…。

 ここでジーコを倒してPKを取られたな。あまりに「疑惑の判定」だったから、本人に猛烈に抗議したっけ。ジーコの兄エドゥには直接FKを決められた。アルゼンチン代表FWバティストゥータの話を一言聞くために頭を悩ませたな…。そんな思い出が現実というものに押しつぶされた。

 メーンの建物内には電力会社社員や作業員がひっきりなしに出入りし、放射線量などの原発事故現場の情報が貼られ、「無断撮影禁止」の張り紙もある。まだここは「前線基地」だ。

 日本協会の最終目標はJヴィレッジを元の姿に復元することだが、理想だけを追うことはできないほどの現実が横たわる。だから、「前線基地」と「一部ピッチの使用」を共存させる計画を立てている。ただ、高い放射線量の厳しい環境で働く作業員が出入りし、寝泊まりする脇でサッカーをプレーする-。そんなイメージを抱くことができない自分がいたことも事実だ。【菅家大輔】