サッカーJリーグ仙台のホーム、ユアテックスタジアム仙台(仙台市泉区)に3日、山形や浦和のサポーター、大宮の球団関係者約300人が集結した。各クラブのサポーターらが、東日本大震災で避難所生活を強いられている被災者をサポートするため、救援物資を持ち寄った。「みちのくダービー」で知られるように、仙台と山形はライバル関係だが、今回は手を取り合いクラブの垣根を越えて力を尽くした。

 いつもは“ベガルタゴールド”で染まるユアスタに、赤や青、オレンジ色を身にまとったサポーターが集まった。各自が救援物資を持参し、医薬品や防寒具、下着、文庫本を中心に集まった段ボールは1000箱を超えた。

 山形と仙台の“共闘”は、これまであり得なかった。山形サポーターが、仙台戦に敗れた時だけ、選手にブーイングを送ったことは有名な話だ。この日も、救援活動をする際に、所属団体を明確にするための「がんばろう東北」と書かれたベガルタカラーのシャツを渡され、「屈辱的だ」と苦笑いする人もいた。

 そんな両者が2日前に連絡を取り、物資の運び出しから積み込みまで一緒に作業。1つになった。山形サポーターの中川淳さん(49)は「こんなことは初めて。まずは宮城の人に元気になってもらいたい。それで5月22日を迎えてうちが勝てるように」と話す。来るべきダービーでは敵同士でも、この日ばかりは支え合った。

 物資の調達、輸送はもともと仙台サポーターが始めた。被災者でありながら、自分たち以上に苦しむ人たちを助けるために立ち上がった。その姿に、他クラブのサポーターらも心を打たれた。朝4時半に埼玉・新座市を出発し、トラックで駆けつけた浦和サポーターの布施正治さん(49)は「ベガルタのサイトを見て『自分たちも』と思い、出てきた。昨年旅行した塩釜がこんなことになるとは…早く復旧してほしい」。大宮はクラブ関係者が仙台に足を運んだ。サポーターや選手が集めた物資を仙台側に託した。

 全国から集まった段ボール箱を積んだトラックは、午前11時にユアスタを出発。気仙沼市、女川町、南三陸町の避難所に向かい、避難者たちの手に渡った。南三陸町の阿部武志さん(38)は「替えの下着がなくて困っていた。感謝です」と頭を下げた。リーグ戦が再開すれば敵同士だが、今回限定で手を組んだサポーターらの思いは、確実に避難所に届いた。【湯浅知彦】