<ナビスコ杯:神戸2-2札幌>◇1次リーグ◇9日◇ホームズ

 手応えの勝ち点1だ。札幌は神戸と引き分けた。前半20分までに2失点も、同35分にFW榊翔太(18)、同37分MF岡本賢明(24)が得点。2点差を2分で追いつく粘りを見せた。今季2点差を追いついたのは初。序盤で失点する課題を露呈したが、攻撃面では16日再開のリーグ戦に向けた収穫があった。札幌は27日の最終節に試合がなく、ナビスコ杯は1勝2分け3敗の勝ち点5で全日程を終えた。

 やられたらやり返す。札幌が意地の2発で勝ち点1を取った。攻撃陣をけん引したのは、4月28日のリーグ大宮戦以来、公式戦8試合ぶり先発のMF岡本だ。まずは0-2の前半35分。左サイドを駆け上がったMF榊に絶妙なスルーパスを出し追撃弾をお膳立て。圧巻は同37分。杉山のスローイングを受けると右サイドを25メートルドリブル突破し左足を振り抜いた。「思いきって打ったのが良かった」。やや左に変化しながら、ゴール左上に突き刺さった。

 “パパ元年”にかける熱い思いが今季初得点につながった。2月に同郷熊本の一般女性と結婚。今秋には第1子が生まれる。「プロ6年目。選手としても親としても責任ある行動をしていかないと」。来年1月には挙式を予定している。男の節目に「J1残留」の文字を沿えるのが今季の大命題だ。リーグ戦は13戦1勝1分け11敗の最下位に低迷。1次リーグ敗退決定も休む暇はない。選手会長として、16日のリーグ再開仙台戦につながる大きな収穫をもたらした。

 チームとしても、光を見いだせる90分だった。石崎監督は「早い時間帯に失点するのは良くないが、前半で2点を取り返す粘り強さは出てきた」と振り返った。リーグ戦では開始15分までの失点がJ1で最も多い6。6日の清水戦でも開始6分で2失点した。立ち上がりの課題は残ったが、打たれてもあきらめないメンタル面の強さを出した。

 試合前には主将の河合が「もし先に点を取られても下を向くな」とゲキを飛ばした。岡本は「失点しないのが一番いい。でも今日は、そこで下を向かずに取り返そうという気持ちを出せた。1つずつ課題をクリアにできれば」と言った。足りない部分は、まだまだある。そんな中でも、昇格した昨季のように劣勢でも泥臭く追いかける、土俵際のしぶとさが芽生えてきた。

 ここからはリーグ戦に専念できる。岡本の2点目はGKのキャッチ後、速攻につなげるというチームコンセプト通りのものだった。目指すサッカーをピッチで出せたこともプラス要素だ。「僕らにとって消化試合じゃなかった。リーグ戦に向けた大事な試合だった」とGK杉山。再開初戦の仙台戦では、この勝ち点1を3に変える。【永野高輔】