<J2:千葉0-1札幌>◇第1節◇3日◇フクアリ

 財前恵一新監督(44)率いるJ2札幌が、ロスタイムの劇的弾で06年以来7年ぶりの開幕戦白星を飾った。後半ロスタイム1分にMF内村圭宏(28)が決勝ゴールを決め勝利。財前監督は、97年のフェルナンデス監督以来、16年ぶり初陣勝利となった。経費削減で準備不足の中、笑顔と厳しさを交えた財前流マインドコントロールで若いチームを統率。昇格候補の千葉を完封で下す、最高のスタートを切った。

 財前監督が鮮やかな采配でJ監督デビュー戦を飾った。後半41分に投入したMF砂川のラストパスから内村が決勝点を決めた。ロスタイム残り3分で劇的勝利。「選手が最後まで体を張って積極的にやってくれたおかげ。うれしい。監督の自分も選手も自信になる大きな1勝」。終了の瞬間、スタッフ全員と抱き合うと、スタンドのサポーターに両手を振り笑顔で感謝した。野々村顧問、三上GM、メーンスポンサー石屋製菓の石水会長と抱き合い、クラブ一体となって出直し1勝を喜び合った。

 準備不足ながら、昇格候補千葉の攻撃陣を封じた。熊本合宿中に指揮官は「あと2週間あれば、いろいろできるんだけど。それを言ったら始まらない。最低限やれることをやろう」と本音を明かしていた。緊縮財政でグアム合宿が中止になり通常6、7週程度かけていた合宿期間は熊本の4週間1回に短縮された。これもクラブの宿命。J相手の実戦4戦2失点と上々の結果だったが、熟成期間は短く、力は未知数だった。

 発展途上のチームを勝利に結びつけたのは、財前流メンタルコントロールだった。熊本合宿では「ボケっとするな、もっと考えろ!」と厳しさを崩さなかったが、2日の直前調整では一転、笑顔を貫いた。「監督がびびってると選手にもそれがうつるからね。なんだろうな。リラックスさせるのもいいかと思ってね」。新人監督の緊張感はなかった。大胆なリラックス采配で、J298試合の知将、鈴木淳監督率いる難敵千葉をいなした。

 現役引退後の97年、立ち上げたばかりのU-15コーチに就任した。3学年そろわない状況での船出に「昔は本当に弱くてね。いつもどうしようかと思ったよ」と振り返る。10年には札幌U-18コーチ延長の打診を断り、あえて福岡の下部組織に移った。昨季は福岡U-18監督に就任も、プレミアリーグ10チーム中8位。決して強豪ではなかったが、多くの若い選手を教えながら筋を通したのは、力で劣っていても監督は動じず、明るく前向きに采配し続ける財前イズムだった。

 まだまだ余力はある。合宿中にDFパウロンが負傷離脱。本来DFの要として期待していた助っ人不在の中、つかんだ1勝でもある。次はホーム開幕戦。Jデビュー戦だった神田、松本については「もうちょっとやれるかな」とさらなる進化を要求した。出来過ぎなぐらいの完封発進だが、若いチームは、勢いづけばどんどん強くなっていく。【永野高輔】