J2札幌のベトナム人FWレ・コン・ビン(27)が、ついに先発デビューする。6日、札幌・宮の沢での戦術練習で主力トップ下に入った。今日7日の天皇杯2回戦(対北海道教大岩見沢)で公式戦初先発することが濃厚となった。21日の愛媛戦でアシストデビューも、現在2戦計9分と時間が短く、まだ得点はない。スタートからの出場で、東南アジア人Jリーガー初の得点を決め、リーグ戦での出場機会増をアピールする。

 たまった鬱憤(うっぷん)を一気に晴らす。この日の全体練習後、ビンはまず、居残りでミドルシュートから体幹トレと続く試合前儀式を終了。その後、天皇杯対策としてGK曵地を前に黙々とPK練習に励んだ。来日から1カ月。ついにつかんだ先発チャンスを前に「大学生が相手とか、関係ない。どんな試合でも出たら100%の力を出したい」と気を引き締めた。

 8月21日の愛媛戦で途中出場し、CKからフェホの得点をアシスト。上々のスタートを切ったが、1日の岡山戦では後半41分に途中出場も、中盤でのパスが相手に奪われカウンターからピンチを招いた。結果的にロスタイムに失点し白星を逃した。雪辱の一戦に向け「なかなか5分で結果を出すのは難しいよ。もう少し時間があれば。今回こそ試合後にいい報告をしたい。点も取れるように頑張りたい」と意欲を示した。

 財前監督はスタートから起用することで、リーグ終盤に向けた起用法の判断材料にする構えだ。課題だったポジショニングと守備での動きが第一。さらに指揮官は「チームとしてボールを動かす中で、どれだけ関われるか。関わって、いかにシュートまで持って行けるかが重要になる」と説明した。ゴール前でのシュート力は既に評価しており、チームと連係しながら、いかに得点の形をつくれるかで、リーグ戦での出場機会も増えてくる。

 この日の練習中は途中から雨が降り出したが、ビンがクラブハウスを引き揚げる際は、すっかり晴れ間も見えてきた。自転車通勤しているため「ナイスタイミングだろ。でも試合は、そう簡単じゃないからね」と笑った。さわやかな風貌に、無精ひげが増えた。“ベトナムの英雄”と呼ばれながら出場は、まだ2試合9分。話題だけじゃ終われない-。チャンスを確実にものにして、実力で監督や仲間の信頼を勝ち取りにいく。【永野高輔】