名古屋の来季監督に、G大阪などを率いた西野朗氏(58)が有力候補としてリストアップされていることが2日、分かった。同日、名古屋ドラガン・ストイコビッチ監督(48)の今季限りでの退任が判明。愛知県内で、クラブが同監督に来季契約を更新しないと通達した。契約満了に伴う事実上の勇退で、今日3日にも正式発表される。後任候補の西野氏はJ1最多、通算244勝と圧倒的な実績を誇る名将。現場復帰の可能性が出てきた。

 名古屋が大きな決断を下した。クラブ史上最長、Jリーグの外国人監督でも最長タイの就任6シーズン目と長期政権を築いたストイコビッチ監督にこの日、来季の契約を更新しない旨を告げた。

 08年に再建の切り札として就任。「ピクシー」の愛称で世界を魅了した現役時代と変わらないカリスマ性を発揮して選手をまとめ上げ、10年には悲願のリーグ制覇を成し遂げた。09年はACLで4強、11年にも僅差のリーグ2位と万年中位とまで言われたチームを改革し、強豪へと育て上げた。監督になってもカリスマ性は健在で、本物のスターだった。

 クラブはその手腕を最大限に評価しつつ、チームに新しい風を吹き込むため今が監督交代のタイミングと判断した。今後も象徴的存在として関係を継続することを見すえ、この日、いの一番に本人と会談を持って直接決定を伝えた。同監督もプロとして、クラブの判断を落ち着いて聞いたという。現在チームはリーグ13位と苦しんでいる。残る7試合も同監督が、口癖でもある「ネバー・ギブ・アップ」の精神を体現し、最後まで指揮を執る。

 6年間でJ1通算100勝を挙げた名将の後任には、日本人の名将・西野朗氏の名が有力候補として挙がっている。96年アトランタ五輪で日本を率いブラジルを破る「マイアミの奇跡」を起こし、G大阪では「超攻撃」を合言葉にチームを10年間も率い常勝軍団に育て上げ、アジアの頂点にも立った。柏、神戸も率いJ1通算244勝は史上1位の実績。一時は日本代表監督の候補ともされ、11年末のG大阪退任直後にも浦和からのオファーも受けるなど日本人屈指の手腕が評価されている。現在はフリーで就任への障害も少ない。ストイコビッチというビッグネームからバトンを受け、名古屋というビッグクラブを率いるのに、これ以上の人物はいない。

 名古屋の監督人事は、強化を推し進めるチーム統括本部を中心としたクラブの専任事項ではなく、筆頭株主のトヨタ自動車社長でもある豊田章男氏も名を連ねるクラブ取締役会の承認が絶対に必要な案件。例年通りなら、11月の取締役会で承認され正式に西野氏招聘(しょうへい)へと動きだすことになるとみられる。いずれにせよ、Jリーグ屈指のタレント軍団は指揮官の交代とともに新たなシーズンを迎えることになる。