いきなり2ゴールお膳立て!

 J2札幌の元日本代表MF小野伸二(34)が25日、室蘭入江運動公園多目的運動広場での広島との練習試合(45分3本)で、実戦初出場した。2本目に左MFとして45分間出場し、チームの全2得点の起点になるなどファン2000人が見守る前でアピール。的確なパスやサイドチェンジは健在で、最短デビューとなる7月20日大分戦に向け、上々の滑り出しとなった。

 天才たるゆえんを、1プレーで示した。小野は1-0の17分、左サイドでボールを受けると、逆サイドを走りだしたサイドバック石井の動きを察知。瞬時に右足でサイドチェンジすると、相手DFがクリアできず、こぼれ球に石井が走り込み2点目が生まれた。

 「まだ精度は低い。あれは石井のシュートがうまかっただけ。でも左で組み立てて右のスペースを生かしてチャンスをつくれたのは良かった」。スキを突く絶妙な判断と質の高いキックで、昨季J1王者を翻弄(ほんろう)しただけではない。カウンターで決めた先制点の起点にもなった。札幌の得点は小野が出場した2本目だけと、明らかに攻撃に変化をもたらした。

 守りでも、味方への指示が早く的確で、相手が準備する前に札幌選手が動きだしコースを絞るため、無駄にボールを追う時間が減った。「1つの声で相手のチャンスをつぶせる。疲れているときに細かく指示を出せば守備も攻撃も流れが良くなる」。動いてしゃべって、チームを操縦。財前監督も「テンポのうまさが出ていた。中盤で動かすところやスルーパスは問題ない。攻撃がスムーズになった」と、文句なしの表情だ。

 W杯ブラジル大会で日本代表が1次リーグ敗退したことについては「同じ日本人として悔しい」と口にしたが「でも全力でやったのだし胸を張って帰って来てほしい」と代表選手を気遣った。この日は日本サッカー界にとって、4年後の大舞台へ向けた再スタートでもある。だからこそ「刺激にもなる」と付け加えた。常に高みを見据える34歳は、札幌とともに、まだまだ成長を続ける。【永野高輔】

 ◆札幌の主な日本代表経験者初実戦

 99年の岡田監督は沖縄石垣島合宿中の2月6日、八重山選抜と練習試合を行い21-0で大勝。08年のDF箕輪は6月29日のJ1第14節G大阪戦にセンターバックとして先発フル出場、チームは4失点敗戦も1対1の強さを発揮した。10年のFW中山は熊本合宿中の2月18日、鹿屋体大との練習試合に途中出場、シュートを3本放つなど見せ場はつくったが無得点に終わった。