<中村俊輔独占インタビュー(下):日本代表編>
セルティックMF中村俊輔(30)が、日本代表を語り尽くした。6日(日本時間7日)のW杯最終予選バーレーン戦(アウェー)では、岡田ジャパンのまとまりに手応えを得た。一方で代表の将来のために、若手選手の奮起を訴えた。欧州からの長距離移動もいとわず、常に青いユニホームを着て戦うことを望んできた男は、愛してやまないチームの現在と未来を真剣に考えている。(聞き手・塩畑大輔、アンソニー・マッカスカー)
勝ち点3以上の手応えをつかんだ。W杯予選の初戦バーレーン戦。3-2の勝利に貢献した中村は、結果以上に、チームが戦う集団として、まとまりつつあることを感じたという。
中村「目標に向かってまとまってきていると思う。バーレーン遠征のミーティングでは、岡田監督があらためて、世界の4強を目指そうという話をしていた。「オレは本気だ」と。選手もそれに共感する人だけが付いていけばいいと思う。時には批判を受けることがあっても、目標を追いかけ続ければいい。そうしないと終わった後にも何も残らない。4強がムリだと決め付けがちだけど、韓国だって02年大会では4強に行った。上位に行けるかどうかは、まずは自分たちの心が決めることだと思う。ダメだと思ったらその時点でダメ」。
世界の上位を目指したいという気持ち。それを周囲の選手から強く感じるシーンがあった。バーレーン戦終了後に、宿舎に引き返すバスの中での出来事だ。
中村「自分は移動のバスで、前の方に座っている。そこから周りを見ると、数年前の代表は、みんなわいわいと携帯ゲーム機をやっていた。でも先日のバーレーン戦では、マスコミ対応を終えた自分が最後にバスに乗り込んだ時、中はシーンと静まり返っていた。みんな最後の失点を重く受け止めていたのだと思う。『あっ、これはいけるな』とその時感じた。だんだん戦う集団になってきたのだと思う」。
3点リードしながら、2点を追いつかれての辛勝。予選初戦で勝ち点3を得たのは上々の結果だ。だがあえて内容にこだわる仲間たちに、中村は成長の予感を感じた。予選前半戦でW杯出場を引き寄せるプランも、すでに脳裏に浮かんでいる。
中村「来年のオーストラリア戦までは、負けなしで行きたい。10月にホームでウズベキスタンには勝って、アウェーのカタール戦で最低でも引き分ければいい。それで2月のホーム戦で、オーストラリアに勝てたら大きい。そうなれば、W杯が見えてくると思う」。
予選突破を目指す一方で、さらに先を見据えて、日本サッカー界全体のレベルアップも望んでいる。未来を託せるような若手選手の、さらなる台頭が必要だというのが、中村の考え。確かに中村本人が出場したシドニー五輪当時は、すでにU-23日本代表のほとんどが、飛び級でフル代表を経験していた。
中村「そういう意味でも、北京五輪では決勝トーナメントに進出してもらいたかった。世界のトップレベルと渡り合う、いい経験を積んで欲しかった。大会は終わってしまったから、次は海外のリーグでプレーすることも、選択肢の1つに入れてみてほしい。みんな『個のレベルの差があった』とか『フィジカルの差が』とか『差がなかった』とか話していたのを、メディアを通して知った。確かに感じ方はそれぞれでいい。ただそれを持ち帰って、Jリーグで補う作業をするというけど、国内にとどまっていては、限界があると思う。相手は日本人だし、味方も日本人だから。やっぱり外に出て、五輪で対戦したような選手と毎日やったら、絶対成長できる。環境も全然違う。荒れたグラウンド、小さいクラブハウス、過酷な移動、慣れない言葉や食事。そういうものを経験すれば、選手としても、人間としても、大きく成長できる。」
海外に出られるように、Jリーグでアピールしたり、代理人を見つけたりとか、今からでもやれることはある。気持ち次第で、ぜったい海外移籍のチャンスは勝ち取れる。ハセ(長谷部)はいい例。浦和では待遇も悪くなかったし、アジアチャンピオンズリーグなどの大舞台に出る機会もあった。でもそれを捨ててまで、ドイツ移籍を選んだ。彼のことは応援したい気持ちがある。
欧州で修練する長谷部のプレーの中に、中村は日本代表の目指すべき姿も見いだした。
中村「いろんな記事やテレビ番組を見ているけど、もっとハセの評価は高くてもいいような気がする。彼のプレーはどんどん伸びている。ポジショニングはいいし、自分を押し殺してチームのために働けている。本当はもっと前に出て、攻撃で自分の持ち味を出したいんだと思うけど、我慢している。相手のロングボールが多いと感じれば、最終ラインに入って頭ではね返す臨機応変さもある。特にバーレーン戦は、周りに攻撃的な選手が多かったから、自分は守備に回ってバランスをとっていた。そうやって状況をちゃんと把握してプレーできるのは、ドイツに行ってやっているからじゃないかな。チームプレーの中で、もっと自分の色が出せるようになるのも、時間の問題だと思う。
少し前の代表だったら、それぞれのポジションで、個人として輝けるかどうかだけが問題だった。それでは強い国に勝てない。個の力で負けてしまったら、もう歯が立たなくなってしまうから。今は誰を使うかより、周囲とどう連動してプレーに厚みを出すかが大事。組織プレーをやりつつ、個の力を出せるのがいい選手。そういうテーマは、代表に行ったときにみんなと話し合うようにしている。たとえば『シュートを打てるときに打たない』という批判を受けることもあるけど、それ以前にやるべきことはたくさんある」。
長谷部同様に、欧州の厳しい環境でもまれることで、チームに貢献できる選手として育ってほしいというのが中村の願いだ。W杯予選のためだけではない。世界トップ国と互角に戦えるようになるためには、どうするべきか-。中村の思いは、いつも日本代表とともにある。(おわり)


