<セリエA:インテルミラノ5-2ジェノア>◇6日◇ミラノ

 インテルミラノDF長友佑都(24)がイタリア移籍後初ゴールを決めた。圧勝したホームのジェノア戦に、後半33分からリーグ戦6戦連続出場。後半39分にゴール正面でハルジャからのパスを受け、左足でチーム5点目のゴールを決めた。日本人で初めてのビッグクラブでのゴールとなった。この日も先発落ちするなど定位置争いは依然として厳しいが、与えられたチャンスに結果を出し、大きくアピールした。

 長友の気迫が歴史的ゴールを生んだ。後半39分、左サイドでボールを持ち、パスを出すと一気に前線へダッシュ。右サイドのDFマイコンからMFハルジャを経由したボールは、ゴール正面の長友の元へ。相手MFロッシから、からみつくようなマークを受けたが、体勢は崩れない。逆に突き放すような形で自由を奪い返すと、左足を振り抜いた。MFスナイダーに背後から抱きつかれ、主将のMFサネッティとはベンチ前で恒例となった日本式の「おじぎ」のパフォーマンス。チーム全員から祝福を受けた。

 長友の気持ちに火を付ける場面があった。左サイドバックの定位置を争うDFキブが後半19分、足をひねる形で負傷。長友はピッチサイドに呼ばれ、指示も受けて交代を待った。だが、定位置を守りたいキブは、交代を断固拒否。足を引きずりながら、前線へ全力で走るキブの姿に、ビッグクラブの定位置にかける誇りを見せつけられた。それに負けないように長友も交代後1分でシュートを放つなど、ガチンコの勝負を受けて立った。

 ベンチスタートのうっぷんを晴らした。リーグ戦では2月16日のフィオレンティナ戦から3戦連続先発していた。しかし、同19日まではDFキブの出場停止、同27日のサンプドリア戦はDFマイコンの出場停止の穴を埋めた形だった。2人とも復帰した今節はまた、ベンチに戻り、レギュラーを奪うだけの信頼は勝ち取れなかった事実をかみしめた。限られたチャンスにアピールを続けるという気持ちで、大きな結果につなげた。

 インテル加入から1カ月ほどだが、積極的に選手の輪に加わる姿勢と周囲から愛される性格で、チームに溶け込んでいる。移籍会見ですしとパスタのどちらが好きかと地元記者に質問されると「すしですけど、今はパスタかな」と笑った。そしてニッコリ笑って続けた。「僕は誰とでも仲よくできる。イタリアでも、ミラノでも同じ。僕はみんなと仲よくなりたい」。一瞬にして会見場のマスコミの懐に飛び込んでしまった。

 試合でも、その長友にしかない特長は発揮された。サンプドリア戦では、得点を決めたFWエトー、MFスナイダーのところへ真っ先に祝福に駆け寄った。2日にミラノ市からクラブが表彰された「金のアンブロジーニ賞」の授賞式では、エトー、スナイダーのエース2人の間に堂々と座り、エトーとふざけ合った。同席したモラッティ会長からも「長友獲得に満足している。誇らしいことだ」と言葉をもらった。

 夢は「世界一のサイドバック」。移籍直前は現在は同僚のDFマイコンの名前を挙げていたが、それ以前は元ブラジル代表DFロベルト・カルロスを目標にしていた。

 「点を取れるDFになりたい」。この日、その第1歩を踏み出した。【波平千種通信員】