<ロシアリーグ:ロコモティフ・モスクワ1-2CSKAモスクワ>◇28日◇モスクワ

 悪魔の左足が完全復活した。CSKAモスクワの日本代表MF本田圭佑(27)が、約2年ぶりの直接FK弾を決めた。前半19分に得意の左足を振り抜き、今季リーグ戦初ゴールとなる先制点。トップ下でフル出場し、敵地ロコモティフ・モスクワ戦で勝利に貢献した。自らのゴールで道を切り開き、成り上がってきた男による衝撃度満点の1発で、移籍金で難航するACミランとの交渉を打開する可能性もある。

 こうやって生きてきた。前半19分に得た約25メートルの直接FK。本田が思い切り蹴り込んだボールは相手DF3人の壁を乗り越え、無回転ではなく、鋭く縦に変化しゴール右スミに突き刺さった。GKの手にも触れさせない“新球”だった。両手を突き上げガッツポーズした。試合後は「お疲れさまでした」とだけ言い残して引き揚げた。

 これまでも左足で、将来を切り開くゴールを決めてきた。CSKA移籍直後に信頼をつかんだ10年欧州CLセビリア戦、世界にその名を知らしめた同年W杯南アフリカ大会のデンマーク戦…。要所ではいつもFKを直接ねじ込んだ。だから「悪魔の左足」と呼ばれ、恐れられてきた。

 11年8月20日トム戦以来の直接FK弾だった。その直後に負った右膝半月板損傷の大けが以来、初めてFKから直接決めた。ロシア・スーパー杯の2得点を含め、今季公式戦は通算3ゴール目だ。

 ACミランへの移籍騒動の渦中でも落ち着いている。ここ数日、CSKAのギネル会長に直接移籍を訴えたという一部報道もあったが「ビッグクラブに移籍したいなんて、3年半ずっと言ってきた。俺の気持ちは変わらない。いまさら何を言う必要があるのか」とデンと構えていた。

 今夏の移籍実現にはCSKAが譲らない満額500万ユーロ(約6億5000万円)とACミランの提示額の間にまだ200万ユーロ(約2億6000万円)の差がある。この1発を見せつけられたACミランがどう感じるか。一方でCSKAのスルツキ監督が「チームにいてほしい。彼が必要だ」と残留を強く希望した。