[ 2014年2月4日8時34分

 紙面から ]

 ソチ五輪フィギュアスケート代表の浅田真央(23=中京大)が3日、女子シングルに向けた最終調整をアルメニアの首都エレバンで行うことになった。団体戦から個人戦までが中10日あるため、いったんソチを離れる計画を立てていたが、4つの選択肢の中から同地を選んだ。交通の便も良く、日本スケート連盟がリンクを貸し切っているため、十分な練習が積める絶好の環境。悲願の金メダルへ、欧州の小国で滑り込む。

 東欧と西アジアに挟まれたコーカサス地方の共和制国家が、浅田の最終前線基地になる。期間中の日程について、フィギュアスケート日本代表の小林芳子監督が「団体戦に出た女子選手2人はアルメニアで調整することになりました」と述べた。団体戦の出場選手は試合当日まで非公表のため名前の言及はしなかったが、日本は女子シングルのショートプログラム(SP)に浅田、フリーには鈴木明子を起用する意向。その両名ともに、1度ソチから移動し、個人戦の数日前に再び同地へ戻ることになる。

 日本スケート連盟は昨年、練習時間が限られる五輪会場事情を考慮し、「日本専用リンク」としてアルメニアの首都エレバンを合宿地に決定。ソチと時差がなく、気候も同じで、治安、衛生も良く、ソチから直行便で1時間半ほどと近く、毎日複数の便が飛ぶ。さらに空港から市街地とリンクも車で数十分の範囲と、非常に高い利便性が決め手になった。

 昨年9月には鈴木ら代表選手4人で強化合宿も実施しており、予行演習も済ませている。リンクはすでに2月から日本の貸し切りで、選手は好きな時間に練習が可能。整氷担当者がロシア出身で、なるべくソチの五輪会場に近い氷の質に近づけるように調整できる利点もあるという。

 浅田はこれまで、中10日間空く日程を考え、複数の選択肢を持っていた。(1)アルメニア(2)元コーチのタラソワ氏の練習拠点であるモスクワ(3)ソチ近隣の欧州国(4)日本に戻っての調整の4つで、佐藤コーチらと直前まで話し合いを進めた結果、(1)を選んだ。初めて訪れる国になるが、移動時間などを考えた上で判断したと思われる。

 現在は日本で調整を続けており、現地入りは5日になる予定だ。「最高の演技をする」という集大成の舞台へ、準備は着々と整ってきた。【阿部健吾】

 ◆アルメニア

 正式名称はアルメニア共和国。西アジアの南コーカサスに位置し、黒海とカスピ海の間にある内陸国。91年に旧ソビエト連邦から独立した。日本との時差は5時間あり、人口は約300万人。国土の面積は2万9800平方キロで、これは日本の約13分の1、旧ソ連の中でも最小になる。公用語はアルメニア語。主要産業は宝石加工(ダイヤモンド)、機械製作。首都はエレバン。

 ◆過去の五輪の前線基地

 06年トリノ大会ではフランス国境に近いイタリアのクールマイヨールに日本オリンピック委員会(JOC)がリンクを用意。金メダルを手にした荒川静香らフィギュア勢が数日間滑り込みを行った。10年バンクーバー大会では日本連盟が市近郊のリンクを確保し、浅田らも利用した。