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 全日本実業団対抗女子駅伝は14日、宮城県松島町中央公民館前~仙台市陸上競技場の6区間、42・195キロで行われる。西日本大会2位のダイハツはチームをけん引する木崎良子(29)と、新人の前田彩里(23)を軸に初優勝を望める力を付けてきている。

 木崎は12年ロンドン五輪16位、13年モスクワ世界陸上4位入賞、そして今年のアジア大会2位と今、最も安定した強さを見せているマラソンランナーだ。フォームを突き詰めて考え、必要なトレーニングを自発的な意思で行う。箸を左手で使ってバランスを矯正するなど、日常生活中の努力もいとわない。

 全日本実業団女子駅伝ではコースが宮城県に変わった11年からは5区を走り続け、区間3位、2位、1位と成績を上げてきた。昨年は32分40秒の区間新。5区は起伏が続く区間で、林清司監督(53)は「慣れと、自身を追い込む力が必要。厳しいコースで差がつきやすい」と大きな期待をかける。木崎で30秒くらいはひっくり返すことができるのは、ダイハツにとって大きなアドバンテージだ。

 前半のエース区間の3区には前田が起用されそうだ。今年1月の大阪国際女子マラソンで学生記録を大幅に更新し、ナショナル・チームにも選ばれているマラソンのホープだが、今季は1万メートルでも日本選手権8位とトップレベルに進出した。腕振りをコンパクトな動きに矯正するなど、マラソンを目指す取り組みのなかでも、トラックと駅伝を利用してスピードをつけようとしている。西日本予選3区では同学年の加藤岬(23=九電工)を抑えて区間1位。「全日本でも区間賞を取りたい」と意欲を見せた。

 2人の他では主将の坂井田歩(29)と、2年目の岡小百合(24)の走りがカギを握る。坂井田は昨年1区で区間2位。西日本予選では調子を落としていたが、直前の米国・アルバカーキ合宿で完全に復調し、前田に先着するシーンも多かった。岡は前回3区を任された有望選手だが、故障で夏以降を棒に振った。だが、同じくアルバカーキ合宿で復調の兆しを見せている。林監督も「前回1分やられた2区に岡を起用できれば、チームの力をフルに発揮できる」と期待する。

 チームを引っ張るのは坂井田と木崎の同学年コンビ。木崎がロンドン五輪16位の惨敗からすぐに立ち直ったのは、周囲への感謝の気持ちからだった。林監督は「今年の駅伝に懸けているのもキャプテンの坂井田と一緒に、チームを引き上げたい思いからでしょう」と話す。

 木崎の練習に取り組む姿勢を見て、前田は走る量も増え、嫌いだった補強にも積極的に取り組むようになった。林監督は目標を「3位以内」としているが、選手たちは優勝を口にするようになっている。若手とベテランの歯車がかみ合えば初優勝は決して夢物語ではない。