駅伝日本一を決めるニューイヤー駅伝は来年1月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。東日本予選を制して本大会でも優勝候補に挙げられる日清食品グループが5年ぶり3回目の栄冠を狙う。

 ロンドン五輪代表の佐藤悠基(30)箱根駅伝2区区間賞の経験がある村沢明伸(25)東日本予選優勝の立役者となった矢野圭吾(25)ら実力者がそろうチームに、異色の新人が加入した。箱根駅伝出場を“辞退”した戸田雅稀(23)だ。

 今春まで所属した東農大は昨年、箱根駅伝予選会(駅伝形式ではなく、20キロの個人レースで10人の合計タイムで競う)を突破できなかったが、戸田自身は個人7位となり関東学連選抜チーム入りをオファーされた。だが、誰もが憧れる箱根駅伝出場を、戸田は断った。言葉にはしていないが、自身のチーム以外での出場に、タスキをつなぐ価値を見いだせなかったのだろう。その証拠に東日本予選優勝時に1区で区間賞を取ったことを「今年、一番嬉しかったレース」に挙げている。

 戸田が異色と言われるのは、中距離ランナーでもある点だ。今年の日本選手権は1500メートルで優勝した。ニューイヤー駅伝でも1区(12.3キロ)なら、東日本予選時のような猛スパートを見せるだろう。「駅伝は区間賞を取ってチームを流れに乗せることが一番ですが、それをきっかけに自分もステップアップしたい。冬季で一段階、二段階と力を上げて、来年のロンドン世界陸上は5000メートルで出場したい」と青写真を描いている。

 チームの優勝には戸田の快走も必要だが、原動力となるのは佐藤、村沢、矢野の佐久長聖高OBトリオの走りだ。佐藤は1万メートルで日本選手権4連覇(2011~14年)したトラックのトップ選手だが、現在はマラソンに移行中。今年4月のロンドンマラソン後に長期間の故障があったが、11月に入って復調してきた。競り合いに強いだけに、前半区間の出場が予想される。東日本予選も最長区間を走った村沢が前々回、前回に続きエース区間の4区候補。東海大4年時に足首を痛めた後は爆発的な走りができていないが、安定感があり、そのレベルが徐々に高くなっている。矢野は1人でもハイペースを維持できる走りを得意とし、勝負の決まる後半区間に起用されそうだ。

 森田修一監督は「今季の記録ではトヨタ自動車が飛び抜けている」としながらも、「ウチのメンバーが100パーセントを出せば、プラスアルファの力も生まれて、勝負をもつれさせることができる」と期待を寄せる。新人の戸田が起爆剤になれば、独走する可能性も持つチームだ。